皇居の自然環境
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/06 19:04 UTC 版)
詳細は「皇居の生物相」を参照 江戸時代以降に開発が進んだ東京都心の他地区と異なり、皇居は江戸城時以降の自然が残り、貴重な生態系が維持されている。皇居の森を中心とする広大な緑地と、水中生物が隠れやすい石垣や水草が多い堀(濠)が一体となっているうえ、釣りなど人間による採捕活動が制限されているため、植物と昆虫類、魚介類、鳥類、哺乳類を含む陸上動物などの間で食物連鎖が成立し、絶滅危惧種を含む生物多様性が保全されている。 吹上御苑と道灌濠周辺で行われた国立科学博物館による1996 - 2000年度と2009 - 2013年度の二回の調査で、植物2077種、動物6375種の生息が確認されている。フキアゲニリンソウ(草)やニホンコシアカハバチ(蜂)のような新種が発見されたほか、イシカワモズク(藻)やヒロクチコギセル(貝)といった絶滅危惧種も保全されている。一方で、アカボシゴマダラ(蝶)やスズミグモ(蜘蛛)のような外来種の侵入も確認された。 大型動物としては、タヌキが1990年代半ばから宮内庁や皇宮警察の職員に目撃されるようになった。明仁天皇の発案で、宮内庁と国立科学博物館が2006年度から糞の分析による餌の解明や、6匹を一時捕獲して発信器を付けての行動追跡といった調査を行い、2008年と2016年に明仁天皇を共同執筆者とする論文にまとめられている。 こうした調査から、太田道灌の遺徳を偲び道灌時代の遺構に手を加えなかった伝承の信憑性や、明暦の大火後に防火帯として整備した庭園に古い生態系が閉じ込められたこと、2003年に始まった東京都によるディーゼル車規制条例の効果が現れている可能性、地球温暖化(ヒートアイランド)が進行していることなどが示唆された。 皇居周辺の堀では、管理する環境省が桜並木の手入れ、ヘイケボタルの放流といった環境保全・改善を進めている。 また、皇居の自然に触れることにより国民の自然への理解を深めるため、宮内庁ではみどりの月間の一環として、吹上御苑内で「自然観察会」を開催している。
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