病院における当直勤務
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/23 00:37 UTC 版)
医業を行う病院の管理者は、病院に医師を宿直させなければならない(医療法第16条)と規定されていて、医師等(医師のみならず、看護師、技師等も含む)の当直については、上記の一般的原則に加え、許可基準の細目が別に定められている。従来、1949年(昭和24年)の通達(昭和24年3月22日基発第352号)によって細目を定めていたが、2019年(令和元年)7月に新たな通達(令和元年7月1日基発0701第8号)が発出され、以後は同通達によって細目を定めることになった。 同通達により、医師等の当直勤務については、次に掲げる条件の全てを満たし、かつ、宿直の場合は夜間に十分な睡眠がとり得るものである場合に、当直の許可を与えるよう取り扱うこと。 通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後のものであること。すなわち、通常の勤務時間終了後もなお、通常の勤務態様が継続している間は、通常の勤務時間の拘束から解放されたとはいえないことから、その間の勤務については、当直の許可の対象とはならないものであること。 当直中に従事する業務は、一般の当直業務以外には、特殊の措置を必要としない軽度の又は短時間の業務に限ること。例えば、次に掲げる業務等をいい、通常の勤務時間と同態様の業務は含まれないこと。医師が、少数の要注意患者の状態の変動に対応するため、問診等による診察等(軽度の処置を含む。以下同じ。)や、看護師等に対する指示、確認を行うこと 医師が、外来患者の来院が通常想定されない休日・夜間(例えば非輪番日であるなど)において、少数の軽症の外来患者や、かかりつけ患者の状態の変動に対応するため、問診等による診察等や、看護師等に対する指示、確認を行うこと 看護職員が、外来患者の来院が通常想定されない休日・夜間(例えば非輪番日であるなど)において、少数の軽症の外来患者や、かかりつけ患者の状態の変動に対応するため、問診等を行うことや、医師に対する報告を行うこと 看護職員が、病室の定時巡回、患者の状態の変動の医師への報告、少数の要注意患者の定時検脈、検温を行うこと 上記1、2以外に、一般の当直の許可の際の条件を満たしていること。 上記によって当直の許可が与えられた場合において、当直中に、通常の勤務時間と同態様の業務に従事すること(医師が突発的な事故による応急患者の診療又は入院、患者の死亡、出産等に対応すること、又は看護師等が医師にあらかじめ指示された処置を行うこと等)が稀にあったときについては、一般的にみて、常態としてほとんど労働することがない勤務であり、かつ宿直の場合は、夜間に十分な睡眠がとり得るものである限り、当直の許可を取り消す必要はないこと。また、当該通常の勤務時間と同態様の業務に従事する時間について労働基準法第33条又は第36条1項による時間外労働の手続がとられ、第37条の割増賃金が支払われるよう取り扱うこと。したがって、当直に対応する医師等の数について、当直の際に担当する患者数との関係又は当該病院等に夜間・休日に来院する急病患者の発生率との関係等からみて、上記のように通常の勤務時間と同態様の業務に従事することが常態であると判断されるものについては、当直の許可を与えることはできないものであること。 当直の許可は、一つの病院、診療所等において、所属診療科、職種、時間帯、業務の種類等を限って与えることができるものであること。例えば、医師以外のみ、医師について深夜の時間帯のみといった許可のほか、上記の例示に関して、外来患者の対応業務については許可基準に該当しないが、病棟当直業務については許可基準に該当するような場合については、病棟当直業務のみに限定して許可を与えることも可能であること。小規模の病院、診療所等においては、医師等が、そこに住み込んでいる場合があるが、この場合にはこれを当直として取り扱う必要はないこと。ただし、この場合であっても、上記に掲げるような通常の勤務時間と同態様の業務に従事するときには、時間外労働の手続が必要であり、割増賃金を支払わなければならないことはいうまでもないこと。 当直勤務に係る許可を受けた医療機関については、その労働実態を把握し、当直勤務として取り扱うことが適切であるかについて確認を行い、問題が認められる場合には、当直勤務に係る許可基準に定められた事項の履行確保を図ること又は当直勤務に係る許可の取消を行うことにより、その適正化を図ることとしている。労働基準監督機関においては、以下の対応を行っている(平成14年3月19日基発第0319007号、平成14年11月28日基監発第1128001号)。 自主点検表の送付・回収による当直勤務の労働実態の把握及び分類自主点検表を提出しない医療機関に対しては、事業又は当直業務の廃止が明らかになる場合を除き、電話等により、事業又は当直業務の有無を確認し、当直勤務がある場合には自主点検表の提出督促を行う。 集団指導等の実施集団指導は第3四半期又は第4四半期において行う。提出された自主点検表の分類により問題があるとされた医療機関、督促を行ったにもかかわらず自主点検表を提出しなかった医療機関、集団指導に出席しなかった医療機関については、行政指導のうえ、一定期日を付して、報告書の提出を求める。 監督指導の実施及び許可の取消指導を行ったにもかかわらず報告書を提出しない医療機関、報告書の内容から問題があると考えられる医療機関に対し、監督指導を実施する。その結果、許可基準に定められた事項上の問題点が認められた場合には、法違反として指摘するなど所要の措置を講じる。また、その労働実態から、当直勤務で対応することが適切でないことが明らかとなったものについては、許可の取消を行う。
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