画題について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/18 03:41 UTC 版)
このバロック様式の絵画は、1700年にアウクスブルクの聖ペテロ修道院の司祭であった地元貴族出身のヒエロニムス・アンブロシウス・ランゲンマンテル(ドイツ語版)(1641–1718)が「良き助言者の聖母マリア」の祭壇のために、地元の画家ヨハン・ゲオルク・メルヒオール・シュミットナー(ドイツ語版)に依頼したものである。そこには、悪魔の象徴である蛇の頭部を足で押さえながら、白く長いリボンの結び目を解いている黙示の日の聖母が描かれている。また、蛇の姿は聖母が手に持つリボンの結び目とも対応している。聖母は12人の小天使と2人の大天使、7つの六芒星からなる輪に囲まれている。聖母の頭上には聖霊が鳩の姿で降臨し、彼女が聖霊の花嫁であることを暗示している。ヨハネの黙示録(12.1)に記されているように、聖母は太陽を纏っている。 三日月の下にかなり小さく天使と人間、犬が描かれているが、これは大天使ラファエル がニネベのトビアにエクタバナのサラを娶るよう促し、仲人として共に旅をするシーンであると解釈されている(トビト記5.17、6.10-13、11.4)。 聖書に基づく2つの図案、そして「良き助言者の聖母」の祭壇に捧げられていることには、別の意味も持たされている。これはこの絵を寄進したランゲンマンテルの家族の身に起きた出来事に由来している。彼の祖父ヴォルフガング・ランゲンマンテル(1586-1637)は、妻ソフィア・レンツ(1590-1649)との離婚の危機に瀕したとき、インゴルシュタットのイエズス会士ヤーコプ・レム(ドイツ語版)司祭を訪ねた。絵の中で旅人が右手を挙げた天使に導かれるがごとく、遠くの教会を目指したのである。レム司祭はマリア像に祈りを捧げ、「この祈りにより、結婚の絆が深まり、結び目を解くように2人の間の問題が解決されますように」と取りなしを願った。すると、彼らの離婚の危機は去り、その仲は平穏なものとなった。後に聖職に就いたランゲンマンテルは、そのことを記念するために絵の中に織り込んだのである。黙示の日の聖母も、天使に導かれる旅人も、バロック様式に沿った表現となるよう注意が払われている。 これらの背景から、聖母マリアは2人の旅人のように「結び目のように複雑で困難な問題」に助けを与えるものだと解釈されている。すなわち、聖母は人生の伴侶を見つけること、そして結婚生活における問題を解決することの助けを与えるものと解釈されている。乳がんを患う女性に対する理解と支援を促すシンボルとしても結び目(ピンクリボン)が用いられる。アレクサンダー大王がゴルディアスの結び目を力をもって切り解いたのとは異なり、聖母は共感をもって解くのである。
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