狩猟・駆除
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 05:15 UTC 版)
通常行われる狩猟のほかに、個体数を削減するために管理捕獲(有害駆除)が実施されており、2012年度の捕獲数は狩猟と有害駆除を合わせて約14万4000頭となっている。北海道のエゾシカの狩猟期間は基本的に10月1日から翌年1月31日までだが、地域によって可猟期間が多少異なっている。エゾシカの個体数を抑制するにはハンターの存在は欠かせないが、その一方で現在の日本では高齢化や銃をめぐる世論の厳しさから、「ハンターが絶滅に瀕している」と比喩されるほどハンターの数が減少している。こうしたハンターの不足を補うため、狩猟免許取得に関する助成や支援がされており、2009年度から狩猟免許受験者は増加している(とくに「くくりわな」の需要が増えている)。地域独自の取り組みも行われており、西興部村では2004年より独自の猟区を開設してガイド付きのハンティングを実施している。 一方で、ハンターに多くを依存する方法では個体数をコントロールできないとして、趣味の狩猟とは別に、個体数調整を目的とした専門の人間による駆除(カリング:culling)の導入が試行されている。例えば、餌付けして1カ所に誘き寄せた群れをまとめて撃つというアメリカ合衆国で開発されたシャープシューティングや、自衛隊の協力による駆除活動といった新しい手法が試験的に実施されている。また、従来は法律で禁止されていたエゾシカの活動が活発になる夜間の発砲による駆除も検討されている。市街地では銃が使えないため麻酔の吹き矢でエゾシカを捕獲している。 このような狩猟活動に関連して、ハンターによって撃たれ放置されたエゾシカを食べたオジロワシやオオワシなどのワシ類が銃弾の鉛中毒で死亡する事例が1990年代後半に数多く報告された。そのため、北海道ではエゾシカに限らず全ての狩猟において大型獣捕獲用の鉛製のライフル弾及び散弾の使用を禁止している。また、ハンターによる法律違反行為が問題になることもあり、ときには誤射や暴発による死亡事故も過去に発生している。 こうした「エゾシカを殺す」という解決策に対して、動物愛護団体や一部の人間による反対意見もある。洞爺湖中島の例では、観光・森林保護・研究といった様々な立場から、シカの駆除を支持する者と保護を訴える者が激しく対立し、マスメディアの大きな注目を浴びたことが過去にあった。世界遺産の知床のトラスト地では、当初エゾシカを排除しない森づくりを目指し、柵などの設置を進めたが、植生被害が後を絶たなかったため駆除を認めざるを得なくなった。
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