没収の対象物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/07 16:22 UTC 版)
刑法上、次の物は没収する(刑法19条1項)。没収するか否かは裁判所の裁量に委ねられている、任意的没収である。 犯罪組成物件犯罪行為を組成した物(同項1号)。次号の犯罪供用物件とは、犯罪の実行に不可欠な要素か否かで区別される。偽造文書行使罪における「偽造文書」、凶器準備集合罪などで使用した「凶器」、賭博罪の賭物など。 犯罪供用物件犯罪行為に使用し、又は使用しようとした物や道具(同項2号)。殺人罪や傷害罪で使用した「ナイフ」や「金属バット」、文書偽造罪で作成に用いられた「印章」や「パソコン」など。 犯人による物件の使用意図を要する。単に偶然役に立ったと言うだけでは足りない。 犯罪の結果の保全のために使用したものなど犯罪行為と密接な関連性があるものも含まれる。 犯罪産出物件(犯罪生成物件)・犯罪取得物件・犯罪報酬物件犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物または犯罪行為の報酬として得た物(同項3号)。犯罪産出物件(犯罪生成物件)とは文書偽造罪における「偽造文書」や通貨偽造罪における「偽造通貨」など、犯罪取得物件は窃盗罪の盗品や賭博罪における賭博行為で得られた金品など、犯罪報酬物件とは殺し屋や財産犯の受け子、売り子が仕事の報酬に得た金銭など。 対価物件犯罪産出物件・犯罪取得物件・犯罪報酬物件の対価として得た物(同項4号)。窃盗罪などにおける盗品の売却利益など。 犯罪組成物件・犯罪供用物件の対価(犯行に用いられた凶器を売却して得られた代金など)は、没収対象とはならない。 なお、拘留または科料のみに当たる罪(侮辱罪、軽犯罪法違反など)については、特別の規定がない限り、犯罪組成物件以外は没収できない(刑法20条)。 没収物と一体となる従物は共に没収する事ができる(例として袋や日本刀の鞘)。 組織的犯罪処罰法、麻薬特例法などにおける没収の対象は「財産」であり、有体物以外の債権等の財産も没収することができるが、刑法19条による没収の対象は有体物に限られる(ただし不動産の没収に関する裁判例は見受けられない)。没収の対象物は社会的危険性・経済的価値のあるものに限られない(東京高判昭和32年5月8日 東京高等裁判所(刑事)判決時報8巻5号116頁は、マッチの軸棒5本を没収した原判決を維持した)。
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