歌唱技術
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 08:07 UTC 版)
あどけない顔立ちと華奢な体からは想像できないような実力の持ち主であった。デビュー当初から歌のうまいアイドルとして評価されており、森川美穂や中森明菜同様、アイドル界1の歌唱力があったと言われる。 本田は新たな活躍の場に挑むごとに音域や唱法のバラエティーを広げてきた。声楽曲を歌うことになった経緯については自身「ミュージカルでいろんな役をこなしているうちにそれまで出せなかったような声を出せるようになった」と説明していた。 『ミス・サイゴン』でキム役をダブルキャストで務めた入絵加奈子は当時本田が「裏声は得意じゃない」と話していたと証言している。しかし『屋根の上のヴァイオリン弾き』のホーデル役はクラシックの声楽のような発声による裏声を求められる難しい役で、『王様と私』のタプチム役ではさらに高い音域を歌うことを要求されたが、トレーニングを積んでこれをこなした。同時期に制作されたアルバム『晴れ ときどき くもり』にはファルセットを多用した楽曲も目立ち、「Lullaby〜優しく抱かせて」の間奏ではオペラ的発声による高音域のスキャットを披露している。 本田は音楽学校などで声楽を学んだ経験はないが、ミュージカルに出演するようになってからは山口琇也や岡崎亮子のレッスンを受けた。特にオペラへの出演経験もある岡崎の指導はクラシカル・クロスオーバーへの進出に大きな影響のあったものと思われる。岡崎は最初に会った時本田のあまりに華奢な体つきに不安になったが、背中をさわってみるとしっかりとした筋肉がついていたので大丈夫だと確信したという。1994年発表の「つばさ」には後半に10小節にわたって声を伸ばすロングトーンがあるが、この伸びやかな声を支えていたのはその強靭な背筋だった。 音域は最終的には3オクターブに達していた。これは例えば通奏低音パートも含めて一人で歌った「パッヘルベルのカノン」(アルバム『時』所収)に遺憾なく発揮されている。しかも本田はその広い音域を均質な響きで発することができた。『レ・ミゼラブル』での共演以来公私ともに親しくしていた森公美子は、普通の歌手には存在する“チェンジ”と呼ばれる地声と裏声が切り換わるポイントが彼女の場合にはどこにあるかわからないと指摘している。 演奏家には何度演奏しても同じように演奏するタイプと、その場の感興に応じて表情を変化させていくタイプがあるが、本田は典型的な後者のタイプだった。一連のクラシックアルバムで編曲を務めた井上鑑は「彼女の場合はまわりが変わると、その変化を反映していくような感性を持っている」と評し、プロデューサーの岡野博行は「毎回歌うたびに、表情もすごく変わる」、「その歌の世界を生き、自分に起きてくる感情をすごく大切にして歌っていた」と語った。本田自身はミュージカルのロングランでもテンションが落ちない理由について「何百回やっても毎回違うからちっとも飽きない」と語っていた。
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