権利移動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/11 04:43 UTC 版)
農地または採草放牧地について、使用及び収益を目的とする権利を設定したり移転することについて、本法では規定を置いている。「使用及び収益を目的とする権利」とは、所有権、地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権等が対象となる。一方抵当権は土地の引き渡しが行われないため、ここにいう使用収益する権利に含まれない。これらの権利の設定、移転をしようとするときは、原則として農業委員会の許可を得なければならない。許可を得ずになされた契約は無効となる。違反者は3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられる。 なお、個人がその住所地以外で農地または採草放牧地について権利を取得する場合は都道府県知事の許可が必要とする規定があったが、改正法によりこの規定の部分は削除されたため、この場合も農業委員会の許可が必要となる。 農業委員会は、権利を取得しようとする者またはその世帯員等の耕作または養畜の事業に必要な機械の所有の状況、農作業に従事する者の数等からみて、これらの者がその取得後において耕作または養畜の事業に供すべき農地および採草放牧地のすべてを効率的に利用して耕作又は養畜の事業を行うと認められない場合には、許可をすることができない。農地の集団化、農作業の効率化その他周辺の地域における農地の農業の効率的かつ総合的な利用の確保に支障を生じるおそれがある場合には、不許可処分をすることができる。農地または採草放牧地について使用貸借による権利または賃借権の設定を受けた者がその農地または採草放牧地を適正に利用していないと認められるにもかかわらず、当該使用貸借による権利または賃借権を設定した者が使用貸借または賃貸借の解除をしないときは、農業委員会は許可を取り消す場合がある。 農業委員会は、次の各号のいずれかに該当する場合には、農地または採草放牧地について使用貸借による権利または賃借権の設定を受けた者に対し、相当の期限を定めて、必要な措置を講ずべきことを勧告することができる。勧告に従わなかった場合は許可を取り消さなければならない。 その者がその農地または採草放牧地において行う耕作または養畜の事業により、周辺の地域における農地または採草放牧地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障が生じている場合 その者が地域の農業における他の農業者との適切な役割分担の下に継続的かつ安定的に農業経営を行っていないと認める場合 その者が法人である場合にあっては、その法人の業務を執行する役員のいずれもがその法人の行う耕作または養畜の事業に常時従事していないと認める場合 なお、市街化区域内においては、農地または採草放牧地を転用する場合は事前の農業委員会への届出で足りるとする特則があるが、権利移動の場合はこのような特則はなく、市街化区域内であっても原則通り農業委員会の許可が必要である。 許可が不要な場合 国または都道府県が権利を取得する場合(国が競売または公売で取得する場合は農業委員会への通知が必要) 市町村が土地収用法により収用する場合 民事調停法による農事調停により取得する場合 相続・遺産分割により取得する場合(取得した者は速やかに農業委員会に届出なければならない) 山林原野を農地とする場合
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