本震のメカニズム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 04:07 UTC 版)
「東北地方太平洋沖地震及び津波のメカニズム」の記事における「本震のメカニズム」の解説
東北地方太平洋沖地震は、これまで日本付近で観測された中で最大のMw9.0を記録した。マグニチュード9クラスの超巨大地震が日本近海という地震観測網の整備が進んだ場所で発生したため、これまでにない精度が高いデータが大量に得られた。また前述のように超巨大地震が発生するとは考えられていなかった場所でMw9.0という規模の地震が発生したため、東北地方太平洋沖地震発生のメカニズムを知ることの重要性を多くの研究者が認識した事情が重なり、これまでに数多くの震源過程モデルが公表された。 しかしこれまで発表された震源過程モデル間にはかなりの差異が見られる。これは観測面の制約と超巨大地震の特性が影響している。地震波のデータから震源過程を分析する場合、震源域に近接した地域の近地強震波形を分析する方法と、震源域から約3000-一万キロ離れた場所で観測されたP波、S波などの実体波形を分析する方法の二つがある。まず近地強震波形は、今回の東北地方太平洋沖地震は、東北地方太平洋沖のプレート境界で発生したプレート境界型の地震であるため、陸地である東北地方を始めとする日本列島に稠密に張り巡らされている地震観測網によって詳細かつ大量のデータが取得されている。また超巨大地震であったため震源域が極めて広く、結果として東日本の多くの地域が震源域に近接していたため、震源過程の空間解像度が高いデータとなっている。しかし震源の東側は太平洋であるため観測地点が存在せず、南北方向の解像度は高いが東西方向の解像度がどうしても低くなってしまう。 一方、遠隔地で観測された遠地実体波形を分析する場合、超巨大地震であった今回の地震の場合、振動の継続時間が極めて長いため、例えばP波が続いている最中に後続波であるPP波などが到達してしまうことがあり、P波などの実体波を用いる震源過程の分析結果の解像度が低下するといった問題が発生する。 また地震波のデータを分析する以外にも、GPS、海底地殻変動などを利用して地震による地殻変動を分析する方法、そして地震によって誘発された津波のデータを用いて分析する方法がある。GPSを利用する場合、近地強震波形を分析する方法と同じく震源域の東側の観測地点が全く存在しないため、どうしても東西方向の解析精度が落ちてしまう。そこで海上保安庁海洋情報部によって設置されていた地殻変動観測点によって観測された海洋地殻変動データを追加することにより、より精度の高い結果を得ることが出来た。 Mw9.0の本震の特徴としては、最大すべり量が極めて大きい反面すべり域は南北約400-500キロ、東西約150-200キロとマグニチュード9クラスの地震としては狭いことと、震源の東側で長周期の波、西側では短周期の波を主に放出していて、長周期の波と短周期の波を放出した領域が異なっているという点が挙げられる。また地震全体としても周期0.5秒以下の極短周期の波が多く、建物に大きな被害を及ぼす周期1-2秒、そして数秒から数十秒という長周期地震動が少なかったという特色が見られる。
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