日本の産出地
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 07:52 UTC 版)
火山活動が活発な日本であるが、流紋岩は酸性岩であり火山の多くが爆発的噴火をして火山灰やデイサイトとして拡散してしまう。そのため急冷されてガラス質になる条件が必要な黒曜石は特定の場所でしかとれない。日本では約70か所以上が産地として知られているが、良質な産地はさらに限られている。後期旧石器時代や縄文時代の黒曜石の代表的産地としては北海道遠軽町(旧白滝村)、長野県霧ヶ峰周辺(和田峠、星糞峠黒曜石原産地遺跡、星ヶ塔黒曜石原産地遺跡、梨久保遺跡、駒形遺跡)、静岡県伊豆天城(筏場や柏峠)、熱海市上多賀、神奈川県箱根(鍛冶屋、箱塚や畑宿)などの山地、海水に接して急冷される機会があった島嶼では、東京都伊豆諸島の神津島・恩馳島、島根県の隠岐島、大分県の姫島、佐賀県伊万里市腰岳、長崎県松浦市の牟田、同県佐世保市の東浜と針尾、同県川棚町の大崎などが知られる。このうち、姫島の黒曜石産地は、国の天然記念物に指定されている。 黒曜石が古くから石器の材料として、広域に流通していたことは考古学の成果でわかる。例えば、伊豆諸島神津島産出の黒曜石が、後期旧石器時代(紀元前2万年)の南関東の遺跡で発見されているほか、伊万里腰岳産の黒曜石に至っては、北松浦半島の縄文人が隆起線文土器・大型石斧(佐世保市相浦の門前遺跡製)とともに持ち込んだ物が、対馬海峡の向こう黒曜石を産出しない朝鮮半島の東三洞貝塚で出土しており、隠岐の黒曜石はウラジオストクまで運ばれている。また北海道では十勝地方も産地として非常に有名で、北海道では現在でも十勝石という呼び名が定着している。 詳細は「日本の貿易史」を参照 栃木県北部にある活火山・高原山を構成する一峰である剣ヶ峰が原産の黒曜石を使用した石器が矢板市より200キロメートル以上離れた静岡県三島市や長野県信濃町の遺跡で発見され研究が進められている。産出時期は古いものでは石器の特徴より今から約3万5千年前の後期旧石器時代と考えられており、その採掘坑遺跡(高原山黒曜石原産地遺跡群)は日本最古のものと推定されている。氷期の寒冷な時期に人が近付き難い当時の北関東の森林限界を400メートルも超える標高1500メートル近い高地で採掘されたことや、従来の石器時代の概念を覆すような活動・交易範囲の広さ、遺跡発掘により効率的な作業を行っていたこと等が分かってきて注目が集まっている。またこの新しい発見により日本人の起源、人類の進化をたどる手掛かりになるという研究者の発言も報道されている。
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