文体・題材
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/10 08:44 UTC 版)
アゴタ・クリストフの影響を強く受けたシマザキの文体は、簡潔で直接的なミニマリズムの文体と評されている。また、簡潔な文体と併せて、季語を書名にしていることから、俳句の影響もしばしば指摘される。 題材は、これまでのところ、すべての作品で日本人を登場人物として日本社会や日本人の精神性を描いている。背景には、1910年の韓国併合、1923年の関東大震災・関東大震災朝鮮人虐殺事件、1931年の満州事変、1937年の南京大虐殺、第二次世界大戦中の大日本帝国、長崎・広島への原子爆弾投下、戦後の高度経済成長などの20世紀の日本の歴史が描かれる。五部作は共通する人物が登場する。たとえば、第1巻『秘密の重み』は、戦時下の日本を舞台に、異母兄妹のユキオとユキコを中心に二人の両親、その親や子の複雑な関係、語ることのできない過去(婚外子、在日朝鮮人女性と神父の関係、無精子症、父親殺害とその直後の原爆投下)が、作品ごとにそれぞれの登場人物の視点から語られていく。シマザキは日本に対して批判的である。移住を決意した理由もそうであったが、特に抑圧的・閉鎖的な日本社会、縦型社会、「常に丁重な態度で、保守的で、体制順応的な」日本人を批判し、いまだに根強い儒教思想を指摘する。インタビューで、主に作品の舞台となっている20世紀前半の日本と、後半の日本とではどのような違いがあるかという質問に対して、「精神性はほとんど変わっていない」と答えている。フランス語で書いているが、日本人が読んだらどう思うだろうかという質問に対しては、日本にいた頃から日本社会を批判し、特に教育制度を批判する記事を新聞に掲載していたし、絶えず体制側の不正と闘っていたが「疲れてしまった」と説明し、「日本人はアメリカ人と違って、日本社会のネガティブな面に対する批判を受け止めることができる」、「外国人の日本人観に関心がある」と語っている。
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