政治的レトリック
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 15:37 UTC 版)
「ナチスのプロパガンダ」の記事における「政治的レトリック」の解説
ナチスの影響下、多くの概念の評価が劇的に変わった。ヴァイマル共和政の市民社会において道徳面で否定的に評価された用語は、ナチスのプロパガンダによって肯定的なものへ変えられた。例えば「rücksichtslos」(顧慮のない)という形容詞は、ナチスの用語では「ひたむき」や「エネルギッシュ」といった肯定的な意味になった。同様に「Hass」(憎悪)は特定のコンテキストでは肯定的な意味になった。「北方人種の英雄的な憎悪」は「ユダヤ人の卑劣な憎悪」に対置された。 プロパガンダ言語のこの他の特徴には「暴力のレトリック」の使用が挙げられる。特にヒトラーの演説では、政敵に対して極端に喧嘩腰なトーンで誹謗中傷し、口汚く攻撃した。政敵は凶悪犯と罵られ、さらに欺瞞、サボタージュ、ペテン、詐欺、あげく殺人と非難された。特にユダヤ人は修辞的に悪魔化されると同時に、特定の用語法で道徳的にも貶められた。例えば動物と比較して「entmenschlicht」(人の道にもとる)。「寄生虫」「カメムシ」「回虫」「害虫」といった罵り言葉を用いることによって共感を失わせ、これを聞く者が、攻撃を受ける者への同情心を失わせるものであった。その代わりに、ナチスが民族共同体にとって有害とみなし、レッテルを張られた一部の人々の物理的「抹殺」や「絶滅」については、これに応じた連想から、もっともなこと、とされた。「国民の敵」を撲滅すべく、ヒトラーやゲッベルスをはじめとするナチの演説者は繰り返し「脅威の徹底的排除」(ゲッベルスの1943年のスポーツ宮殿演説)や「ヨーロッパにおけるユダヤ人の絶滅」(ヒトラー)を訴えかけた。ユダヤ人に対するプロパガンダ関連では、ナチの新聞学者ヨハン・フォン・レーアス(ドイツ語版)が特別な役割を果たした。
※この「政治的レトリック」の解説は、「ナチスのプロパガンダ」の解説の一部です。
「政治的レトリック」を含む「ナチスのプロパガンダ」の記事については、「ナチスのプロパガンダ」の概要を参照ください。
- 政治的レトリックのページへのリンク