放射能汚染による効果
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 02:11 UTC 版)
汚い爆弾は核汚染が長く残ることが懸念されているが、そういった核汚染の戦略的価値に対する評価も過去の核実験で行われている。2007年7月の記事で、AP通信の軍事記者ロバート・バーンズは、米軍部上層部は少なくとも1948年7月時点までに、核兵器が引き起こす放射能汚染の軍事戦略上で無視できない「効果」を理解していたことを示唆するメモの存在を指摘している。ビキニ環礁で1946年7月1日と24日に行われた核実験は、2度目の水中爆発で深刻な核汚染が発生したため予定した3度目の実験を中止したが、これに基づくと考えられるメモは「核爆弾を水中で爆発させた場合は爆発で発生する直接的な被害よりも核による汚染のほうが重要となる」「爆発で環状雲が発生し、汚染された水の粒子が風で運ばれて広い範囲に拡散して周辺の生物を速やかに死に至らしめ、飛散した放射性物質の粒子は堆積して周辺の建物を汚染し、長期的な危険を発生させる」ことが記され、「戦略上このような汚染は大都市や工業地域の活動に影響を与える点で核兵器は優れている」と結論している。 1947年に記されたビキニ実験の極秘扱いとされる公式評価資料は「核汚染が短時間ないし長期に生命を脅かす範囲を、目に見える境界線を持たず生み出すことによって、汚染と死の懸念は常に生き残った者に付いてまわり、何千から何百万の避難民は交通を麻痺させ、身に着けている衣服や荷物が汚染を拡散させる懸念、そして汚染地域から避難民へ独特な心理面で危険が生まれる」ことを示唆している。これは「爆薬で核物質を飛散させることを目的とした爆弾」汚い爆弾に共通する。 現代の軍隊は原発災害や汚い爆弾・テロリズムへの対応も求められているが、原子力災害である福島第一原子力発電所事故におけるトモダチ作戦は放射能汚染下で米海兵隊の航空機が行う初めての作戦となった。同作戦に参加した在日海兵隊当局者は米軍の対応を研究する上で有益な作戦だったとの認識を示している。沖縄駐留海兵隊が被災地への救援物資輸送に使用した航空機や乗組員は微量ながら汚染され、特に圧縮空気をエンジンに送り込む部分周辺の汚染が強かった。除染に要する時間は飛行計画にも影響を与えたが、価値ある教訓になったとしている。
※この「放射能汚染による効果」の解説は、「汚い爆弾」の解説の一部です。
「放射能汚染による効果」を含む「汚い爆弾」の記事については、「汚い爆弾」の概要を参照ください。
- 放射能汚染による効果のページへのリンク