支持的な論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/09 14:07 UTC 版)
支持的な論は主に神経生理学(脳科学)の分野に多い。ロフタスに反対する精神分析の流れを汲む還元主義者エリック・カンデルは動物実験においてCREBのブロックにより長期記憶の形成が妨げられる事実を発見し、記憶を忘れたり強化したりする事が人工的に可能であることを示した。そもそもロフタスが抑圧説の否定の根拠としたのはそういった神経メカニズムが発見されていないことであったのだが、彼の発見によりそれが否定された。 1990年代末には、複数の研究でコルチゾールという物質がトラウマティック・ストレスにより発散され、これが記憶の抑制に関与していることがわかった。この物質がストレスにより誘発された場合には長期記憶で貯えられる情報の検索を妨げることができる。この物質は海馬を損傷させる作用があり、この物質が大量に分泌された場合、実際に記憶の検索が妨げられ「抑圧された記憶」のような現象は起こりうる可能性がある。 また、精神活動の即時的効果を示す事を示す事の出来る脳スキャンのような新たな技術は神経生理学の分野に大きな進歩をもたらした。それらの説は心的外傷による海馬や扁桃体の変化に着目する(van der Kolk等の研究者)。それによると大脳新皮質において統合されないまま海馬や扁桃体(大脳辺縁系)に記憶が散在する事が抑圧された記憶を作り出すと言う。また、この記憶は体性感覚に連動して働くとも言われる。これは「潜在記憶」と「顕在記憶」に関係する話であり、これが正しければ潜在記憶を言語化させることには意味があるということになる。この記憶は危険な場面にあった際に次に同じような場面に遭遇した際に生命を守る可能性を少しでも高めるための学習であり、危険な場面に遭った際、通常の判断の場合に行われる場合の長い時間を短縮するために、前頭前野が通常行われる複雑な脳の処理を極限まで省いてしまうのだという。ただし、これは身体の「フリーズ」を引き起こす可能性があり良い面ばかりではない。また、この病のない人はトラウマティックな記憶を普通に思い出せるのに、PTSD患者の場合想起がフラッシュバックになってしまうという事実もある。 また、実際に心因性の健忘は虚偽記憶と同様によく起こる事が分かっている。例えば、リンダ・マイヤ・ウイリアムズ (1994) の報告では健忘が起こるという事を確定的に示している。この調査では12歳未満で性的虐待を受け通報され救急病院で診察を受けた129人の女性を追跡調査したが、この女性たちの38%は「カルテにその事実が残っていたのに」17年後の調査時点で全く記憶がなかった。
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