擬似乱数列と真の乱数列
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/13 01:01 UTC 版)
決定的オートマトン (en:deterministic automaton) であるコンピュータでは、基本的には確定的な計算によってしか数列を作ることができない。しかし、確定的な計算によって作られた数列でありながら、用途において必要とする統計的な性質に関して、サイコロなどで作られた乱数列を近似した数列の生成法があり、そのようにして生成された数列を擬似乱数列という。特にコンピュータへの実装に関しては、ビット列を生成することから Deterministic Random Bit Generator (DRBG) という語もある。「乱数列と近似の性質」の評価(検定)に関しては各種の提案があるが、標準としては米国のNIST、FIPSが検査方法を、ANS X9-82の中で公表しているものがあり、いくつかの方法について公認としている。 以上のような、確定的な計算により生成される擬似的な乱数列に対して、(十分に)本質的に確率的な自然現象・物理現象を基にして作られる乱数列を「真の乱数」「自然乱数」「物理乱数」などという。非決定的という点を強調した Non-deterministic Random Bit Generator (NRBG) という語もある。この発生に用いられる代表的な自然現象は、原子核の放射崩壊により放出された放射線のカウントや時間間隔、電気抵抗器の両端に現れる熱雑音などのホワイトノイズやピンクノイズなどのノイズ、熱雑音などを原因とする半導体素子の遅れ時間のバラつき、光の屈折からの光子の分散などが多く使われている。前述のFIPSでは、自然乱数の検定方法はいまだ検討中となっているが、いくつかの必要条件を示しており、乱数発生源の健康状態が確認できること、発生源のエントロピーを確認できること、発生回路を自己検定できることなどがあげられているが、まだドラフトの段階となっている。特記すべき点として、自然乱数はその発生源のエントロピーの低下に備えて、疑似乱数と混合する(たとえば二進乱数なら排他的論理和を取るなど)ことが望ましいとしていることがある(これは望ましくない場合もある。コンピュータの応答などで遅滞が許されない場合は疑似乱数にフォールバックすべきだろうが、暗号などに使う場合などには絶対に真の乱数でなければならない場合がある)。 近年、IoT他、セキュリティの程度を高める要求から、暗号のためにより良い乱数が必要とされ、従来はその実装が高価で一般に特殊な用途でしか実用化されていなかった自然乱数に対する需要が高まり、たとえばCPUメーカーであるインテルがCPU内部に機能として組み込む例もでている。 世界での自然乱数の発生器については英語版の記事が詳しい。
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