排他的経済水域境界画定を巡る主張の相異
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/13 15:48 UTC 版)
「排他的経済水域」の記事における「排他的経済水域境界画定を巡る主張の相異」の解説
400海里よりも少ない距離で、海を隔てて隣接する2国が領海基線から排他的経済水域の限界距離200海里の位置に線を引くと、重複する水域が出現する。このような場合、重複水域のうち境界を何処に引き直すか、双方の合意なしに一方的に設定することはできない。『海洋法に関する国際連合条約』では重複海域の線引きの手順については規定が無く、それぞれの国は水域の経済的利益の最大化を図ろうとするため、境界の画定は困難を極める。 例えば東シナ海においては、中華人民共和国は「大陸棚自然延長論」に基づいて自国の沿岸からに伸びる大陸棚の突端は沖縄トラフの西斜面の最下部でありEEZの境界も大陸棚境界と同じ位置にあるとする「東シナ海大陸棚沖縄トラフ限界説」を主張している。一方、日本は沖縄トラフ(海底の溝)のような海底地形に法的な意味はなく東シナ海大陸棚の東端は南西諸島東側の琉球海溝に向けて落ち込む斜面上にあるとする「東シナ海大陸棚琉球海溝限界説」を主張している。さらにこの「東シナ海大陸棚琉球海溝限界説」をとるならば日本と中国は大陸棚を分有していることとなり、この場合「衡平な解決」の原則に基づけば、それぞれの国の領海基線から等距離中間線を大陸棚・EEZの境界とするのが妥当であると日本は主張をしている。中国の主張する「東シナ海大陸棚沖縄トラフ限界説」をとると、等距離中間線などの両国の海底資源の平衡性がとれた状態から中国の方に大きく傾くこととなり、海底資源の「衡平な解決」の原則を大きく逸脱するものである。日本の主張する「等距離中間線論」は「衡平な解決」の原則からみても正当である。 なお、ミャンマーとバングラデシュ間の対立においては、国際海洋法裁判所は「大陸棚の(帰属の)境界は、中間線を基本とする」という判決を下している。 中国は南シナ海上の島を起点とした他国とのEEZの重複水域の再線引きの根拠として「等距離中間線論」を主張しベトナム、フィリピンの主張と対立している。中国が「等距離中間線論」を主張しているのは争点の海域の海底地形に明瞭に判別できる大陸棚の限界線が存在しないためである。しかし、そもそもEEZの境界設定以前に、起点となる島々の力による一方的な占取に始まり、一方的な領有権の主張を根拠としているため、条約上有効なのか大いに疑問の余地がある。 また韓国と中国の間のEEZの重複海域の境界の再線引きについては、黄海中の重複水域下の大陸棚に地形上の明瞭に判る大陸棚の終端部が存在しない。そのため中国は中韓両国が大陸棚を分有していると考え「衡平な解決」を前提とした「等距離中間線論」を主張している。しかし現在EEZ重複水域上の排他的な境界線の画定にはいたらず、中韓は暫定措置としてEEZ重複水域に共同漁業管理水域を設定し生物資源の共同管理の実施をしている。
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