挿絵・イラストの重要性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 21:09 UTC 版)
「ライトノベル」の記事における「挿絵・イラストの重要性」の解説
ライトノベルにとっては、挿絵によるイメージと挿絵に対する読者層からの評価は、他ジャンルの小説よりも重要な意味を持つ。これは、ライトノベル読者のうち少なくない数が、イラストレーションで作品を選択する「イラスト買い」を行っていることに起因する。「イラスト買い」が多く行われる理由は、ライトノベルがメインのターゲットとしている層は活字よりもアニメやマンガに親しんでいる層であるためとされているからである。 初期のライトノベルの挿絵担当者は、安彦良和や天野喜孝など油絵や水彩画のような絵画手法をも持ったアニメーター出身者や、永井豪などの伝奇アクション作品系の漫画家、いのまたむつみ・美樹本晴彦などアニメ業界出身の当時の若手中堅イラストレーター、都築和彦などのパソコンゲーム業界出身のイラストレーターなどが主流であった。 少女文学のジャンルでは、1987年に花井愛子が講談社X文庫ティーンズハートの創刊に際して企画から関わり、同年、『一週間のオリーブ』を第一線で活躍する人気漫画家のイラストを採用した華やかな少女小説として出版し、これが人気を集めたのに続いて、少年向けでも1990年代初頭、神坂一『スレイヤーズ』の挿絵を手掛けたあらいずみるいの登場を契機としていわゆるアニメ塗りのイラストへの変革が発生した。これはアニメを見慣れた世代の読者が増加するとともにそうした絵柄が支持を集めるようになったことと、ライトノベルの需要増加とともに短時間で大量のイラストを生産できる体制を確立する必要があったことに起因している。 1990年代後半に入るとパソコンと画像ソフトウェアの発達からCGを利用したイラストレーションが増加し、美少女ゲームなどからも人気を集める絵柄のエッセンスを取り込むなどの動きが見られた。特に電撃文庫は緒方剛志、黒星紅白、原田たけひとなど、アニメ業界やゲーム業界でも活躍する若手イラストレーターの登用で躍進し、MF文庫Jがより大衆化された美少女路線で追随した。2000年代以降はいとうのいぢ、ヤスダスズヒト、ブリキなどがヒットメーカーとして知られている。 ライトノベルでは人気イラストレーターが表紙(および挿絵)を担当するとそれだけで売り上げが伸びる効果があるとされている。榎本秋は「もちろんヒットしたのは作品が魅力的であるため」と前置きした上で、「イラストの力がそれ(売り上げ)を押し上げたのは間違いない」としている。 近年ではライトノベルと一般文芸の中間に位置するライト文芸の勃興によって、一般小説の装丁でもイラストレーターが重視されることが増えている。大多数の作品に挿絵イラストが使用されている一方で、あえて挿絵やイラストを使用しない方針をとる作品もある。これは「本屋で買うのが恥ずかしい」という中高生より上の年齢層の読者の敬遠や「イラストがあると却ってイメージが制限される」という読者に対応したものである。
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