押しつけは事実誤認である
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/09 01:38 UTC 版)
「押し付け憲法論」の記事における「押しつけは事実誤認である」の解説
指摘:現在の憲法は憲法研究会が発表した憲法草案要綱をGHQが参考にして制定されたものである為、米国が一方的に押し付けてきたものであるとは言えない。 反論:当時作成された多くの憲法草案の中で、憲法研究会の憲法草案要綱が特に国民の間で支持されていたことを示す資料はない。1946年2月13日に日本政府が提出した「憲法改正要綱」に対する回答を聴取するためGHQを訪れた松本国務大臣と吉田茂外務大臣は、ホイットニーから「マッカーサー草案」を手交され、その際、日本政府の改正案(「憲法改正要綱」)はGHQにとって承認しがたいこと、提示した草案(「マッカーサー草案」)は米本国・連合国・極東委員会において承認されていること、現在の日本政府の改正案を保持したままでは天皇の地位を保障することが難しいこと、提示した草案と基本原則を一にする改正案を速やかに作成し、その提示を切望することなどが申し渡されている。日本国憲法第66条の文民規定については、極東委員会の要請でGHQが引きさがらず、金森憲法担当国務大臣がその旨を第1回小委員会でのべざるをえなかった。結局シビリアンを「文民」という日本語にして、修正案はできあがった。 指摘:原案作成時の「密室の7日間」に焦点を絞れば押し付けになるかもしれないが、時間の軸・場の軸を外して立法者論を採用すれば押し付けとはならない。憲法の骨格について外国人の賢者がやってきて議論する、骨格をつくるというのは一つのあるべき姿である。そもそも女性が選挙権を持たず、土地改革がなされず、農民が小作で、労働者の人権も認められない、教育の自由も宗教の自由もない社会を我々は望まない。これは当時の権力機構・政治経済体制に基盤を置いた政治家たちからは絶対に出てこない発想であって、芦田均や幣原、安倍能成など保守リベラル派が国際的視野にたって原案作成に取り組んだ事実を確認すべきである。明治憲法の原案もお雇い外国人だったヘルマン・ロエスレルが起案したものである。 反論:幣原内閣の憲法問題調査委員会(松本委員会)が作成した案(松本試案)は帝国憲法を基礎として大正デモクラシーの復活を目標に作成され幣原内閣の公式案としてGHQに提示されたものであるが、日本国憲法とは似ても似つかない。日本国憲法を押し付けられたものでなく幣原らが自主的に作成した原案としてとらえるなら、松本試案と日本国憲法の差について合理的に説明する必要がある。 なお、女性参政権・労働組合法は憲法改正を待たずして導入されており、女性参政権や労働者の権利と帝国憲法が両立しないというのは事実誤認である。農地改革は戦前から農林省で検討されており、実施されなかったのは帝国憲法の制約ではなく地主層の抵抗による。また、日本国憲法は帝国憲法より財産権の保障を強化しており、農地改革はむしろ帝国憲法時代より困難になっている。
※この「押しつけは事実誤認である」の解説は、「押し付け憲法論」の解説の一部です。
「押しつけは事実誤認である」を含む「押し付け憲法論」の記事については、「押し付け憲法論」の概要を参照ください。
- 押しつけは事実誤認であるのページへのリンク