感覚とコミュニケーション
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/05 22:10 UTC 版)
「ハンドウイルカ」の記事における「感覚とコミュニケーション」の解説
ハンドウイルカは餌を探すために反響定位(エコーロケーション)を行う。潜水艦のソナーや魚群探知機などと同様に音波を発生し、その反射音により物体の位置や距離の測定を行う。発生するクリック音は、メロンと呼ばれる前頭部の器官によって屈折させられ、身体に対して正面の方向に集中して発せられる。ハンドウイルカの耳は眼のすぐ後(尾びれ側)にあり、外から見ると穴が開いているのだが、音は外耳孔ではなく下顎を通して内耳に伝わり、音として認識される。探知している対象物に近づくと、反射音が大きくなるが、ハンドウイルカは発生する音波の大きさを調整して対応する。一方、コウモリの反響定位やソナーの場合だと、反響音が大きくなる状況では、受信側の感度を下げて調整している。 眼は頭部横の両側に位置している。視力は非常に良い。眼球内部には輝板(光輝壁紙、タペタム)と呼ばれる組織があり、暗い場所に適応した構造を有している。対照的に嗅覚は非常に劣っている。 ハンドウイルカ同士は身体表現と音声によって互いにコミュニケーションを行っていると考えられている。声帯は持たないが、噴気孔近くにある6個の気嚢(きのう)を用いて、様々な音声を発している。個々のハンドウイルカには、自分自身を表現する「名前」(音)があり、他の個体に対して自分自身を表現することが可能らしい。約30種類程度の識別可能な音を使って音声によるコミュニケーションを行っているようであるが、まだ「イルカ語」として確認できてはいない。 ただし一頭のイルカに教えたゲーム内容が別の個体に伝わることから言語に相当する伝達手段を持つことが確認されている。エコー音で状況を直接イメージするように進化した脳を持つイルカが、わざわざ記号に変換して配列する体系の言語を採用する合理性は乏しく、そのような、イメージ中心で単語を補助的にしか用いない世界観に基づいた「イルカ語」はあったにしろ翻訳不可能であろうと言われている。 しかしイルカ用の人工単語を覚えさせて「このフリスビーを尻尾で触った後でそれを飛び越えよ」程度の文章なら理解できる能力を持つ。またこの実験により、イルカは「誰が」「何を」「どうした」の入った文章を理解したが、「いつ」「どのように」という文章は理解できなかったことが報告されている。この結果によりイルカの脳が持つ世界観の一端が伺われる。イルカの知能に関する記事としてはCetacean intelligence(英文)も参照のこと。
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