弁翅亜節 Calyptratae
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/12 04:11 UTC 版)
「ハエ」の記事における「弁翅亜節 Calyptratae」の解説
大型のいわゆるハエらしいハエで、日常生活で「ハエ」として認識されているのはたいていこの仲間である。 シラミバエ上科 Hippoboscoidea 成虫が鳥類や哺乳類といった恒温動物の寄生者として特殊化したグループで、体外寄生して吸血する。蛹生類(ようせいるい)とも呼ばれ、幼虫は雌成虫の体内で卵から孵化すると体内で分泌される栄養物質を摂取して成長し、蛹化(ようか)寸前に産み落とされ、直ちに蛹になる。 宿主に到達した成虫が終生そこに留まるシラミバエ科 Hippoboscidae、コウモリバエ科 Streblidae、クモバエ科 Nycteribiidae の他に、アフリカのみから知られ、短時間の吸血時以外は自由生活をするツェツェバエ科 Glossinidae が知られる。ツェツェバエ科は「睡眠病」または「眠り病」とも呼ばれるアフリカ・トリパノソーマ症の病原体を媒介することで知られる。 イエバエ上科 Muscoidea 大型のハエらしいハエの中で、主として腐敗植物質、草食・雑食性動物の排泄物を主たる発生源とするものが多いグループ。フンバエ科 Scatophagidae はヒメフンバエ Scatophaga stercoraria のような幼虫が食糞性の種がよく知られるが、幼虫が生きた植物の葉などに穿孔する種も多い。成虫は小昆虫を捕食する種が多い。 ハナバエ科 Anthomyiidae にも生きた植物に幼虫が穿孔して成長する種が多いが、キノコや動物の糞で成長する種も少なくない。農作物の顕著な害虫として知られるダイコンバエ、タマネギバエ、タネバエの幼虫は宿主植物を腐敗させつつ食害するが、その一方で施肥された油粕などの腐敗有機物にも産卵が行われ、幼虫が成長することが知られている。ハナバエ科の一部の種も成虫が小昆虫を捕食する。 ヒメイエバエ科 Fanniidae の幼虫は動物の糞などで発生するが、褐色で比較的硬い外皮に多数の突起を有する毛虫状の外観を有し、一見ハエの幼虫に見えない。雄の成虫はしばしば集団で群飛する。 イエバエ科 Muscidae には幼虫が動物の糞や腐敗有機物で発生するものが多いが、キノコなど様々な場所で幼虫が成育する種を擁する。幼虫が捕食性の種もある。汎世界的な屋内害虫であるイエバエ Musca domestica は近縁種にはクロイエバエ Musca bezzi など成虫が大型草食獣の体表で涙や傷口からの滲出体液を摂取し、宿主が排泄した糞に産卵して幼虫がそこで成長する種が多い。イエバエはアフリカでそうした生活史を送っていた種が人家内に進入し、人の生活に伴う廃棄物に依存して生活するように分化して世界中に広がったものと考えられる。今日でも畜舎の牛糞などからよく発生するなど大型草食獣との親和性の高さを維持しており、ウシの腸内にしばしば常在する病原性大腸菌O157の媒介種としても注目されている。 ヒツジバエ上科 Oestroidea 大型のハエらしいハエの中で、主として腐敗動物質、肉食・雑食性動物の排泄物を主たる発生源とし、寄生性の種も多いグループ。クロバエ科 Calliphoridae の幼虫は動物の糞や腐敗物などで繁殖する。そのため病気の媒介者ともなる。一部寄生性のものもあり、カエルやミミズ、カタツムリなどへの捕食寄生を行うものも知られる。 Mystacinobiidae科は Mystacinobia zelandica 1属1種のみが属する。ニュージーランドに固有の科で、コウモリの一種ツギホコウモリ Mystacina tuberculata の樹洞中の巣に寄生し、無翅でクモのような姿をしている。ただし吸血性はなく成虫、幼虫とも糞食で、新天地への移動のために成虫はコウモリの体表にしがみつく。かつてはショウジョウバエに近縁ともされたが、分子系統などからはクロバエ科に比較的近いとされ、クロバエ科の亜科 Mystacinobiinae ともされる。 ヒツジバエ科 Oestridae の幼虫は哺乳類に寄生する。 ワラジムシヤドリバエ科 Rhinophoridae の幼虫はワラジムシ亜目やカタツムリなど、陸生の節足動物や軟体動物に寄生するとされる。 ニクバエ科 Sarcophagidae の幼虫は肉で増えるが、寄生性のものも多い。 ヤドリバエ科 Tachinidae の幼虫のほとんどは他の昆虫類に寄生し、一部はクモやムカデなどの陸生節足動物などに寄生する。種類が非常に多く、含まれる数亜科をそれぞれ独立の科として扱う場合もある。 Axiniidae科は D.H.Colless という研究者が1994年に提唱した新しい科で、オーストラリアとニューギニアに分布するが、独立の科とせず、ワラジムシヤドリバエ科に含める考えがある。幼虫は何に寄生するかは未知である。
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