州及び市や郡の場合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/29 14:20 UTC 版)
「最低賃金 (アメリカ)」の記事における「州及び市や郡の場合」の解説
州別最低賃金は州法の改正、市や郡の最低賃金は条例の改正もしくは設立による。州の場合は、連邦と同じく州法は州下院、上院で過半数の獲得ののち州知事の署名、市や郡も議会で過半数を獲得したのちに首長の署名によって発効する。 ただし、連邦と違い、州の場合、州法による最低賃金の引き上げは、住民投票によって行われることもある。例として、カリフォルニア州では州議会の採決で決定しており、ワシントン州シータック市では住民投票で決定した。 また、引き上げ方は以下の違いにより、州及び市や郡によって変わってくる。 引上げ目標水準 サンフランシスコ市やカリフォルニア州、ワシントン D.C.のように時給15ドルに引き上げることを目標とする自治体があり、州では8州が目指している。しかしその一方で、時給15ドル未満を引き上げ目標としている自治体もあり、ラスクルーセス市(ニューメキシコ州)の場合は、最低時給10.10ドルとしている。 目標達成後の最低賃金改定方法 コロラド州やカリフォルニア州のように、物価連動で引き上げが規定で明記されている自治体があるが、そのような規定のない自治体もある。物価に連動して引き上げる場合、2019年7月1日以降のエメリービル市のように、最低時給が15ドルを超えて上昇した事例もある。このほか、フロリダ州では労働省が公表した都市被用者消費者物価指数に基づき9月までの1年間の上昇率を算出し、上昇率に応じて翌年1月から改定するとしている。また、州最低賃金を消費者物価の動きに応じて改定する州は10州ある。更に、時給額を15ドルへ引き上げ後に消費者物価の動きに応じて改定する州がカリフォニア州を含め9州ある。 なお、対象となる労働者の範囲(適用する業種の範囲)は、小規模企業への配慮、チップの取扱い等、細部の規定は州や郡、市により様々である。 引上げペース 目標達成期間が数年と短期の場合と、10~20年単位の長期となっている自治体がある。前者の場合は、引上げペースが速いため、ニューヨーク市が2016年大晦日の引き上げ時は、前年比で22.2%の引き上げとなった。逆にミシガン州のように、年率 2.2~2.3%程度の緩やかな引上げを長期にわたり予定している場合もある。 また、毎年一定の金額を引き上げる事例もあり、コロラド州は1年あたり0.90ドル、マサチューセッツ州は同0.75ドル、ミズーリ州は同0.85ドルを引き上げている。 そして、カリフォルニア州では、従業員25人以下の場合は2019年、従業員26人以上の場合は2018年から、毎年1ドルずつ最低賃金を引き上げているが、雇用情勢と小売売上高が悪化したとき等には、州議会の決定により引上げを中止できるとしている。 従業員規模別 メリーランド州やモンゴメリー郡、ニューヨーク州のニューヨーク市、エメリービル市、シアトル市等では企業の従業員数によって最低賃金の引上げ幅に差を設けている。また、カリフォルニア州やロサンゼルス郡では、小規模な企業の最低賃金引上げのペースを、大規模な企業のペースより1年遅くしている。 業種別 特定の産業労働者に対して、通常の最低賃金とは別に設定されている。例えば、ニュージャージー州とカリフォルニア州では農業従事者、ニューヨーク州ではファーストフード店の従業員を含めたホスピタリティ産業従事者である。 地域別 オレゴン州とニューヨーク州では、州内の地域を都市部とそれ以外の地域に分けて設定している。 一方、アメリカでは、郡や市でも独自に最低賃金を設定することが可能であり、メリーランド州のモンゴメリー郡やワシントン州のシアトル市、カリフォルニア州のサンフランシスコ市、ロサンゼルス郡等は、州に先駆けて最低賃金の引上げを行っている。エメリービル市やシアトル市は、州より高い水準の引上げ目標を設定している。 但し、州によっては郡や市が独自に最低賃金を決定することを禁止している場合もあり、 例えばルイジアナ州では、州内の郡や市が独自に最低賃金を設定することを禁止している。 米メディアによると、29州とコロンビア特別区(首都ワシントン)は、連邦最低賃金を超える水準に最低賃金を設定している。一方で連邦最低賃金と同じ州も相当数あり、連邦レベルで引き上げが決まれば、こうした州が大きな影響を受ける。
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