学風と評価
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/24 09:31 UTC 版)
クザンは、デカルト以来のフランス哲学の伝統とドイツ観念論、スコットランド常識学派の綜合を試み、十九世紀フランスにおけるスピリチュアリスム的エクレクティスム学派(Eclecticism)を確立した。このフランス・スピリチュアリスムの学風は彼が教えたエコール・ノルマルやソルボンヌでは主流となり、ほぼ一世代の哲学徒に影響を与えた。この頃に培われたエコール・ノルマルの伝統は、ジュール・ラシュリエ、エミール・ブートルー、モーリス・ブロンデル、アンリ・ベルクソンや20世紀のサルトル、ジャック・デリダといった後の卒業生たちにまで引き継がれている。 フランスで初めて哲学史研究の分野を開いたのもクザンである。『近世哲学史講義 Cours d'histoire de la philosophie morale au XVIIIe siècle』(1841年)はクザンの主著の一つである。彼は1828年に歴史哲学について連続講演を行い、歴史を3期に分けしれぞれの時代は「無限の観念」「有限の観念」「有限と無限の関係の観念」といった指導理念によって支配される、とした。 また、クザンによるプラトンの対話篇のフランス語訳は1822年から公表されてすぐに古典として認められた。小説家フローベールはそこから大きな影響を受けた。エリック・サティの劇付随音楽『ソクラテス』(1918年)のテキストとして採用されている。エコール・ノルマルでの弟子として、ギュスターヴ・ジェフロワがいる。 一方、1857年にイポリット・テーヌはその著書『19世紀におけるフランス哲学 Les philosophes français du XIXe siècle』でクザンの哲学を手厳しく批判した。また教理派全体がフランスの文学に悪影響を与えると考えていた批評家のサント=ブーヴは覚え書きの中でクザンを「絶倫の道化役者」と形容した。 作家で観念学派のスタンダールはクザンのドイツ仕込みの哲学には賛同しなかったが、王政復古下でジェズイットや極右王党派によって公職追放されていた時のクザンの勇敢な態度については賞賛している。
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