奈良公園の鹿についての諸問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 02:54 UTC 版)
「奈良公園」の記事における「奈良公園の鹿についての諸問題」の解説
乗用車の普及や幹線道路の整備に伴い、車と鹿の衝突・接触事故が多発しており、奈良公園界隈の道路では、常に鹿の飛び出しに注意を払う必要がある。「鹿の飛び出し注意」という交通標識まで存在する。 最近では、心無い者によって鹿が危害を加えられる事件も多い。2003年には鹿がエアガンで撃たれる事件があり、2004年には果物ナイフで刺される事件も起きている。また2008年8月8日には漁具のヤスで刺されているのが見つかっている。2010年3月13日には春日大社の参道で矢が刺さった鹿が見つかったが、傷が深く後日死亡した。ただし、1970年にも、10歳ぐらいの雄鹿が角をえぐりとられ、血まみれになって死んでいるのが見つかっている。この事件は、角欲しさの鹿殺しと推定されている。 本来、鹿は警戒心の非常に強い動物で、野生の鹿が人に近づくことは少ないが、奈良の鹿は神格化されたために手厚い保護を受けた影響もあり人を恐れない。但し、5月から7月の出産期、9月から11月の発情期には気が荒くなっているので注意が必要である。奈良公園周辺では、鹿が道路を横断して交通を妨げたり、付近の家や敷地に入り込む光景がしばしば見られる。隣接する奈良県庁の庭や、稀に近鉄奈良駅やJR奈良駅周辺にも出没することがある。過去にはJRの踏切で鹿が電車にはねられたこともある。 奈良の鹿については愛護団体である「奈良の鹿愛護会」が毎年調査しており、2021年発表の調査によれば、全1105頭(前年比181頭減)、内オス217頭、メス806頭、子鹿82頭である。死亡原因は疾病80頭、交通事故59頭等となっている。最近では、「奈良の鹿愛護会」の財源不足が深刻であり、観光客に鹿せんべいの購入を積極的に勧めるなどの活動をしているが、根本的な解決には至っていないのが現状となっている。 その一方で、近在の農地を荒らし、農作物の食害の被害が依然として発生している。「奈良市鹿害阻止農家組合」 の県知事への要望書によれば、「公園周辺、公園から遠く離れた地域にも出没し、野菜、水稲、植木・苗木等を食い荒らし、フェンスや海苔網の鹿を傷つけない柵での対応では被害が減らず、長年にわたり鹿との戦いで組合員の高齢化にもよりたいへん疲れはてております。」という。「共生できる理想と思われる」700-800頭まで数を減らすことも含め、被害補償などへの要望が出されている。
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