大内刈りとは? わかりやすく解説

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おお‐うちがり〔おほ‐〕【大内刈(り)】

読み方:おおうちがり

柔道足技の一。相手体勢崩し重心かかっている足のひざの裏側へ自分の足を内側か掛け、刈るように倒す足技


大内刈

(大内刈り から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/14 17:48 UTC 版)

乱取り稽古で大内刈を試みる手前の柔道家

大内刈(おおうちがり)は、柔道投げ技足技21本の一つで刈り技の一種である。講道館国際柔道連盟 (IJF) での正式名。IJF略号OUG

概要

基本形は自分の足の外側で相手の脚の内側を刈り倒す技。右組の場合、前さばきで、体を相手の内ふところに入り、真後ろまたは左後ろすみに崩して内側から右足で相手の左脚を開かせるように大きく刈って倒す技。小内刈と同様に牽制や崩しに使うのに便利な技であるため、内股大外刈背負投などへの連携に使われることが多いが、単独で一本になるケースも多く見られる。なお、刈る足を相手の足に絡ませて同体となって後ろに倒れてしまうと禁止技の河津掛となり反則になってしまう。また、踏み込んだ時に体勢が斜めになっていると、小外刈大内返で返されやすく、うまい人でも、この体制のまま技を決めるケースは少ない。基本は正面から正対し、前に踏み込む。うまい人も体勢を真横にするか、体勢が斜めでも技を掛けるときには、正面から正対する様に調整する。1948年の講道館機関誌『柔道』で玉嶺生は、相撲では内掛けになる旨述べている[1]

大内刈の防ぎ方としては、刈られようとされる脚の力を抜くことである。そうすることで上体に力が伝わらず、脚にだけ相手の力が伝わり、楽に堪えることが出来る。そのまま脚を解き外してもいいし、返し技を狙ってもいい。

大内刈への返し技としては大内返がある。また、大内刈をかわして、逆に大内刈をやり返した場合は、「大内刈」が記録される。

変化

大内巻込

大内巻込(おおうちまきこみ)は掛けた時に相手に重なる様に浴びせ倒す大内刈。

大内掛

大内掛(おおうちがけ)は相手の脚の内から足を引っかけ相手を後方に押し進んで刈り倒す大内刈[2]。踏み込んだ際に、大外刈大外落小外刈小外掛に比べると、遊びが出来てしまい、相手に反撃されやすい。1982年10月の講道館新技名称発表への検討中、試合で多用されているのでこの技を加える案があった。1954年7月発足の講道館技研究部投技研究部門の方針「新・旧五教にある投技の名称は、そのままとする」に反するとし大内刈に含めることとなった。名称の提唱者は工藤一三、大滝忠夫であった[2]。別名大内落(おおうちおとし)。

脚取り大内

脚取り大内(あしとりおおうち)は脚を掛けないほうの相手の脚やその下穿きを持っての大内刈[3]。柔道家の尾形源治は自著で脚を持たないほうの手は相手の前襟を四指を内に持ったほうが良いとしている。手技に分類している[4]

1948年の講道館機関誌『柔道』で玉嶺生は、相撲では三所攻めになる旨述べている[1]。三所攻めはさらに相手の胸を頭で押している。

別名ワン・レッグ・ピックアップ[5]内刈落[5]片足取(かたあしどり)[4]。柔道家の川石酒造之助は脚で相手の脚を刈らない朽木倒の方を「片足取」と呼んでいる[6]

文鎮刈

文鎮刈(ぶんちんがり)は小内刈のフェイントからの大内刈。戸塚派楊心流柔術の山本欽作の長男で柔道家の山本昇の得意技[7]

楔刈

楔刈(くさびがり)は右の払腰大外刈大車足車などが仕掛けられてきた時、背後から相手の両脚の内側を大内刈の要領で相手の軸足の左脚を左脚で刈ったり、払ったりする返し技[8]。柔道では禁止技である。同じ禁止技の河津掛と異なり、講道館柔道の技名称やIJF技名称には含まれていない[9]。罰則は講道館柔道試合審判規定では警告または反則負け、国際柔道連盟試合審判規定では反則負けである。サンボブラジリアン柔術では使用できる。柔道でも相手の軸足を内から止める楔止(くさびどめ)は許される。内から入れる脚の爪先を上げると効果的である[10]

1953年の書籍『柔道必携 審判の巻』に全文掲載された1951年5月4日改定の講道館柔道試合審判規定では楔刈の禁止は明記されていないが[11]、同書内の「質疑応答」で禁止である旨、著者の工藤一三は回答している[12]。規定の「禁止事項」にも「その他相手の体に危険を及ぼすようなこと。」とは記載してある[13]1955年5月6日改正の講道館柔道試合審判規定で楔刈の禁止は明記された[14]

1982年の「講道館柔道の投技の名称」制定に向けて講道館では新名称の候補に挙がったが試合審判規定で禁止されているので、採用されなかった[15]

事件・事故

2024年7月の京都市で、7月1日に伏見区にある警察学校で訓練の中の乱取りで、4月に入校したばかりの23歳の女性巡査が大内刈をかけられ倒れて後頭部を強く打ち、意識不明の重体となり、7月13日に死亡[16][17]。乱取りの相手も同じ20代女性巡査で初心者同士で、体格に大きな差はなく、ヘッドキャップを着用し頭部を保護していたという。訓練参加者は約50人、指導は教官3人であった[18]

出典

  1. ^ a b 玉嶺生「柔道五教の技と角力四十八手」『柔道』第19巻第5号、講道館、1948年4月、22頁。 
  2. ^ a b 嘉納行光川村禎三中村良三醍醐敏郎竹内善徳『柔道大事典』佐藤宣践(監修)、アテネ書房、日本、1999年11月21日、63頁。ISBN 4871522059。「大内掛」 
  3. ^ 『柔道 技の見極めハンドブック』柏崎克彦(監修)、ベースボール・マガジン社、2004年8月5日。 ISBN 978-4583612836。「大内刈(別法)」 
  4. ^ a b 尾形源治柔道神髄』大仁堂、日本、1930年5月、46-47頁https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1033178/31 
  5. ^ a b 八田一朗レスリング』 IV、成美堂書店、日本〈オリンピック叢書〉、1938年4月22日、86頁https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1227745/51 
  6. ^ Mikinosuke KAWAISHI (1955). Ma méthode de judo. Jean Gailhat(仏訳、イラスト). フランス. p. 94. "KATA-ASHI-DORI" 
  7. ^ 神田久太郎「巨人に対する技術の研究」『柔道』第28巻第5号、講道館、1957年5月1日、41頁、NDLJP:6073282/24。「先生はこの技を、文鎮刈と称して最も得意としてやつて居られた。大正十二年千葉の武徳殿で」 
  8. ^ 大滝忠夫『柔道十講』 下、不昧堂書店、日本〈体育図書館シリーズ〉、1959年7月10日、49頁https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2488452/28。「楔刈」 
  9. ^ 嘉納行光川村禎三中村良三醍醐敏郎竹内善徳『柔道大事典』佐藤宣践(監修)(初版第1刷)、アテネ書房、日本、1999年11月21日、128頁。 ISBN 4871522059。「楔刈」 
  10. ^ 小俣幸嗣、松井勲、尾形敬史『詳解 柔道のルールと審判法』 2004年度版、大修館書店、2004年8月20日、85-86,160頁。 ISBN 4-469-26560-8 
  11. ^ 工藤一三『柔道必携 審判の巻』北辰堂、1953年2月15日、41-52頁。NDLJP:2461984/22。「講道館柔道試合審判規定」 
  12. ^ 工藤一三『柔道必携 審判の巻』北辰堂、1953年2月15日、87-88頁。NDLJP:2461984/45。「質疑応答」 
  13. ^ 工藤一三『柔道必携 審判の巻』北辰堂、1953年2月15日、48頁。NDLJP:2461984/26。「講道館柔道試合審判規定 禁止事項」 
  14. ^ 三船久蔵工藤一三、松本芳三『柔道講座』 第5巻、白水社、日本、1956年3月25日、95頁https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2478123/50。「審判規定の解説 松本芳三」 
  15. ^ 「柔道の投技の名称について」『柔道』第54巻第2号、講道館、1983年2月1日、22頁、NDLJP:6073590/16。「参考 新しい投技名称の候補として挙げられたけれども、採用されなかったもの」 
  16. ^ 警察学校で柔道訓練中 頭を打った20代女性巡査が死亡 京都府警 | NHK | 京都府
  17. ^ 意識不明だった23歳女性巡査が死亡 「大内刈り」で後頭部強打 京都府警で柔道練習による死者4人目|社会|地域のニュース|京都新聞
  18. ^ 女性巡査、柔道訓練で死亡 京都府警の警察学校で - 日本経済新聞

外部リンク


「大内刈り」の例文・使い方・用例・文例

  • 大内刈りという柔道の技
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