地政学的な世界観
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/15 09:27 UTC 版)
シーパワーの発展によって世界は一体化し、それぞれの大陸間で相互交流ができるようになった。世界を一つの体系として観察する視点は海だけでなく空も対象として含むものである。先行研究であるハルフォード・マッキンダーの『デモクラシーの理想と現実』によれば、ユーラシア大陸を世界全体の中で最大の大陸、すなわち世界島として考えており、広大なシベリアをハートランドと概念化することが論じられている。 ハートランドには以前から遊牧民が存在しており、遊牧民は世界史を通じて海洋に向けて断続的に軍事的圧力をかけ続けてきた。ハートランドから海洋に至るまでに存在するユーラシアの沿岸全域は内側の三日月地帯と呼ばれ、ここには外洋と直接的に接続している諸国家が存在しており、またその海洋の外側には外側の三日月地帯が存在する。 このマッキンダーの地政学の概念はユーラシア大陸の地形学的な性質から再検討すれば、ハートランドはそのまま使用できるが、内側の三日月地帯と呼ばれる沿岸地帯はむしろリムランドと呼ばれるべきであるとスパイクマンは提唱する。ユーラシア大陸を外洋から分離する周辺海域や地中海は海の公道を構築しており、そのさらに外側にはイギリス、アフリカ、オーストラリア、日本などの外側の三日月地帯が広がっている。 ハートランドの重要性は内陸部の交通手段が海上輸送と競合できるほどに発展すれば、世界島の中央に位置するために国土の潜在力が向上することにある。ハートランドはユーラシア大陸の中心に位置するためにリムランドよりも交通の利便性が高く、例えばイギリスが海軍力を大陸の反対側に送るために迂回している間にロシアはハートランドの内部に存在する鉄道を使用することが可能である。これはロシアが重大な脅威となりうることを示しており、また位置に関する基本的な関係、中央と周辺の関係である。 またマッキンダーによれば内側の三日月地帯すなわちリムランドはヨーロッパ沿岸、アラビア半島、アジアのモンスーン気候から構成されており、水陸両用国家が存在しているとされている。そしてこの地域はシーパワーとランドパワーの巨大な緩衝地帯となっているだけでなく、農業や産業が活発に行われており、人口密度の高いリムランドが世界情勢にとって重要である。このことはスパイクマンが「リムランドを支配するものがユーラシアを制し、ユーラシアを支配するものが世界の運命を制する」と述べていることからも分かる。
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