緩衝地帯
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/13 16:33 UTC 版)
緩衝地帯(かんしょうちたい、英語: Buffer Zone)とは、地政学の用語のひとつで、大国や大きな文化の核に挟まれた諸国・地域のこと。このような地帯を挟むことで、対立する国家間の衝突をやわらげる効果が期待できる。
このほか、住宅地と工業地を隔てる帯状の緑地帯や野生動物の生息地周辺の立ち入り禁止地区[1]、世界遺産や文化財周辺の開発が制限された区域[2]などの意味で用いられることもある。
地政学用語としての概説
大国にとって、自国の境界からの距離があればあるほど、自国の影響力が低下するならば、影響力を行使できる範囲は、他の競合し得る大国の影響力に勝る範囲としておのずと定まるとされる。ある緩衝地帯に他の大国の影響力も及ぶようなオーバーラップ地域がある場合にどちらの勢力圏であるのか、またはどちらに優位な地域なのか曖昧な間隔域となりやすい。そのため複数の影響力が及ぶようなオーバーラップ地域は軍事的な紛争地域になりやすい。
しかし、紛争の結果としてどちらの支配圏に組み込まれるか定かでない場合も多く、大国が軍事的な行動する場合の意思決定を逡巡せざるを得ない不透明な地域として捉えられやすい。どちらかの勢力に明確に属さない曖昧な地域を挟むことで、大国間の衝突を和らげる意味合いがある。逆に、そうした紛争の結果の不透明さが軍事的に積極的な野心を持つ実力者の心理をたきつける場合も多く、安全どころか紛争地域になりやすいという側面もある。とりわけ、世界の大国にとって緩衝地帯として認識されているのが東欧や東南アジアであるとされ、東西冷戦期において、資本主義経済圏と共産主義圏の境目であったこれらの地域は、常に米ソ二極型の秩序体制の中でしばしば政治的に動揺を招いた地域でもある。
イギリスのマッキンダーは米英などの海洋国家に対する脅威として、ドイツ・ソビエト連邦の膨張に警鐘を鳴らし、独ソ間の膨張に歯止めをかける緩衝地帯を設けることを提唱し、緩衝地帯を戦略的に用いる理論を唱えたことで知られている[3]。
事例
脚注
- ^ 環境省自然環境局 > 生物多様性国家戦略 > バッファーゾーンの設置による獣害対策の例
- ^ 河野俊行「世界遺産条約とバッファゾーン」
- ^ ジョン・オロッコリン編・滝川義人訳『地政学事典』(東洋書林、2000年)49-50頁。
参考文献
- ジョン・オロッコリン著・滝川義人訳『地政学事典』(東洋書林、2000年)
関連項目
- 緩衝国
- 地政学
- 大陸国家
- 海洋国家
- ハートランド
- 中立地帯
- 非武装地帯
- 南極条約
- Buffer strip
- 回廊地帯
- マーチ (領土)(March) - 中世ヨーロッパにおいて、広い意味では国の中枢に対して、あらゆる種の国境。緩衝地帯、共同統治地帯などのこと。
外部リンク
緩衝地帯
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/24 09:13 UTC 版)
「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の記事における「緩衝地帯」の解説
構成資産を取り巻く緩衝地帯は大浦天主堂を除き、潜伏キリシタンと海との関係(例えば貝を代用聖具にするなど)を示唆するため、洋上にまで範囲を設定している。原城跡では城の守りの要となった北・東・南面の島原湾を自然の要害として城の一部と見立てている。出津集落と大野集落は集落西面の角力灘を含み、特に出津では浜口地区が漁村であったため、海上を含めることは潜伏キリシタンの生活の一端を捉えることになる。﨑津集落も漁村であることから羊角湾の﨑津港全域。春日集落は浜辺から対岸の生月島を隔てる辰ノ瀬戸に及び、そのまま中江ノ島までを包括する。黒島の集落・野崎島の集落跡・頭ヶ島の集落・久賀島の集落では島を取り囲む周囲の海洋域が取り込まれ、頭ヶ島では法的保護根拠となる重要文化的景観に基づき(下記「重要文化的景観として」の節を参照)「新上五島町崎浦の五島石集落景観」に含まれる中通島の赤尾・江ノ浜・友住地区(いずれも漁村)まで網羅。江上集落は大串湾全域が指定されている。
※この「緩衝地帯」の解説は、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の解説の一部です。
「緩衝地帯」を含む「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の記事については、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の概要を参照ください。
緩衝地帯と同じ種類の言葉
- 緩衝地帯のページへのリンク