地上の位置の決定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/27 07:40 UTC 版)
「トランシット (人工衛星)」の記事における「地上の位置の決定」の解説
トランシットの基本運用原則は送信機が地上にあり受信機が軌道上にあることを除いて非常用位置指示無線標識装置に利用されるシステムに類似している。信号は地上基地に直接送信され、その後トランシットと同様のプロセスを使った送信機で修正がおこなわれた。 トランシット衛星は2分毎に正確な時間の送信と衛星の6つの軌道要素と軌道摂動の変数の情報を2つのUHFキャリア信号で放送した。この軌道天体暦と時計修正は4つの海軍投入追跡基地のひとつからそれぞれの衛星に1日2度アップロードされた。この放送情報は地上の受信機がいずれかの時点での衛星の位置を測定することを可能にした。2つのキャリアを利用することで電離層での反射による地上受信機のナビゲーションエラーを減らすことが可能となる。トランシットシステムは最初の全世界での時刻保持サービスも提供し、人々が世界のどこでも時計を50マイクロ秒の精度で同期させることを可能にしたトランシット衛星は150と400MHzで送信しており、これら二つの波長は電離層による衛星ラジオビーコンの屈曲を相殺することを可能とするために利用され、これにより位置精度が向上した。 受信機はドップラー効果による固有周波数曲線によって位置の計測が可能となっていた。ドップラー効果は宇宙機が接近してくる場合、電波の波長に見かけ上の圧縮を生み出し、離脱時には逆に波長が見かけ上伸びる。宇宙機は時速27360km程度の速さで巡航しており、受信される信号は10kHzから増減する。ドップラー曲線は衛星からの距離によってそれぞれの位置で固有である。地球の自転によって受信機は衛星から近づいたり遠ざけられたりしており、これによって近接時と離脱時に非対称のドップラーシフトが生まれ、これによって受信機は衛星軌道の南北を確認し東西を決定することが可能になる。 正確な受信機の位置を把握することはより難しく、ナビゲーションソフトウェアは衛星の運動をレシーバーの最初の「仮の」位置に基づいた、「仮の」ドップラー曲線の計算に利用した。ソフトウェアは次にドップラー曲線のそれぞれ2分間分を最小二乗法曲線にあわせ、衛星から受信される実際のドップラーと「仮の」ドップラー曲線がすべての2分間分の曲線で最も整合する位置に「仮の」位置から帰納的に動かした。 もし、受信機が船や航空機などによって動いていれば、理想的なドップラー曲線との間にミスマッチを生じさせ、位置精度を低下させた。しかし、位置精度は低速巡航中の船舶であれば2分間のドップラー曲線1回の受信でもおおよそ100メートル以内の精度であった。このナビゲーションの基準は通常UHFアンテナを2分間しか展開しないアメリカの潜水艦がトランシットの修正を利用可能なように米海軍が要求したものである。トランシットシステムの米国潜水艦版は衛星の軌道データからダウンロードされる暗号化された特別データを含んでいた。この拡張データはシステム精度を大幅に向上させることを可能にした。この拡張モードを利用すると誤差はロランCとGPSの間に当たる20m以下であり、当時は最も正確な測位システムであった。
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