国際規格の翻訳利用との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 03:59 UTC 版)
「日本産業規格」の記事における「国際規格の翻訳利用との関係」の解説
ISO規格、IEC規格、ITU規格といった国際規格は、各規格を作成している民間の国際標準化機関から著作権保護が主張されている。またJISCを含むISO加盟団体は、1992年11月に採用され1993年1月1日から発効しているPOCOSA協定 (ISO Policies and Procedures for Copyright, Copyright Exploitation Rights and Sales of ISO Publications) に基づいて、ISOが発行する規格を含む文書の著作権保護義務を負っている。この点、TBT協定に基づき、国家規格であるJISは国際規格のISO/IEC/ITUの規格内容に整合化する必要があるため、これらの国際規格を翻訳してJISに採用する際に著作権が問題になる。JISの原案に採用される国際規格を作成した国際標準化機関は、日本政府に対してその規格の著作権に基づいて権利を主張することは可能である。しかし国により制定されたJISを利用する国民、企業等との関係では、日本と諸外国とでは国家規格の制定プロセスにおいて次の表のとおり官民の違いがあり、民間団体により制定されている国際規格や先進諸外国の規格と、主務大臣によって制定されるJISを同列に論じるのは適当といえない。 主要国の政府と国家標準化機関の状況国名日本米国カナダ英国ドイツフランス政府における標準化管理部署 経済産業省産業技術環境局基準認証ユニット 商務省国家標準技術研究所 (NIST) 産業省消費者問題局 (OCA) など ビジネス・イノベーション・技能省 (BIS) 経済技術省 (BMWi) 経済産業雇用省 (MEIE) 国家標準化機関 日本産業標準調査会 (JISC) 米国国家標準協会 (ANSI) カナダ標準委員会 (SCC) 英国規格協会 (BSI) ドイツ標準協会 (DIN) フランス規格協会 (AFNOR) 上記機関の法的地位 政府審議会 非営利団体 政府から独立した連邦公社 非営利団体 登録社団 公益性承認非営利社団 ※出典:鳥澤孝之,「国家規格の著作権保護に関する考察 -民間団体が関与した日本工業規格の制定を中心に-」 また、著作権国際条約であるベルヌ条約、WIPO著作権条約、TRIPS協定で、各加盟国の国民・法人が有する著作権の外国での保護については、その外国の国内法令の定めるところによると規定されているため、スイスに本部があるISOの規格を原案としてJISを制定する場合も、ISOの著作権保護については日本の著作権法が適用される。以上のようなことから、国家標準化機関が政府審議会である日本の体制では、次節で述べる著作権法13条2号がJISについて適用されることから、ISOに対する著作権保護義務を果たせないとする著作権法学者の学術的見解がある。
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