国連海洋法条約における開発制度
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 08:36 UTC 版)
「法的深海底」の記事における「国連海洋法条約における開発制度」の解説
国連海洋法条約第11部には深海底に関する規定がおかれた。同条約によると、深海底とそこにあるレアメタルなどの資源は「人類の共同遺産(英語版)」であり(第133条・第136条)、いずれの国家の主権下にもおかれず、国家・私人を問わず深海底の取得を禁じられ、それらに代わって国際海底機構が人類全体のために深海底に関するすべての権利を取得し行使するとされた(第137条・第156条)。国連海洋法条約に定められる具体的な開発方式としては、国際海底機構の直属の機関である「事業体」が直接開発するもの(直接開発方式)と、国際海底機構と提携した国連海洋法条約締約国か、または締約国国籍の法人などが開発するもの(ライセンス方式)との、二元的開発体制が採用された。この開発体制を「パラレル方式」、または「並行方式」という。これは国際海底機構に一切の開発権限を集中させることを主張した発展途上国と、同機構を国家や企業へのライセンス発給機関にとどめることを主張した先進国の間の妥協によるものである。締約国や締約国国籍企業などが深海底開発を行う場合、国際海底機構に業務計画を申請し承認を得なければならない。技術や資本を有する企業に開発が独占されることを避け「事業体」による開発を促進するため、事業計画申請者は同等の価値が見込まれる2つの鉱区を申請しなければならず、2つの鉱区のうち一方を「事業体」が開発する「留保鉱区」として「事業体」が先に選び、もう一方の鉱区が「非留保鉱区」として申請者に割り当てられる。この2つの鉱区を申請し割り当てる方式を「バンキング方式」という。陸上で同種の資源を生産する国の利益を保護するため、業務計画の承認を受けた開発者は深海底鉱物資源を開発するにあたって国際海底機構が定める年間生産上限枠を守らなければならず、収益の一定割合を機構に拠出しなければならない。また開発者には深海底開発技術を国際海底機構に提供する義務も課され、業務計画承認手続きの手数料と、年間100万ドルの固定料金の支払いが義務付けられた。さらに国連海洋法条約第11部の規定や国際海底機構の規則・決定に従わない開発者や締約国に対しては、機構はそれらの操業などの権利を停止・終了させたり罰金を科すことができる。
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