呈色とその原因
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/24 07:14 UTC 版)
「ダイヤモンドの物質特性」の記事における「呈色とその原因」の解説
ダイヤモンドは様々な色を示す。ダイヤモンドの構造的な欠陥や不純物の存在により結晶構造に欠陥が生じ、その結果着色したダイヤモンドが生成される。理論的には、純粋なダイヤモンドは無色透明である。ダイヤモンドは不純物である窒素元素の有無により、主に2つの型(タイプ)に区別され、タイプごとに結晶欠陥や光の吸収スペクトルが異なる。 I型 I型のダイヤモンドには主に窒素原子が不純物として最大1%含まれている。もし窒素原子が2つ1組、またそれ以上に凝集しても、ダイヤモンドの呈色に関して影響を及ぼさない(Ia型)。全ての宝石ダイヤモンドの約98%はIa型であり、かつてダイヤモンドの一大生産地であった南アフリカのケープ州で採掘されたダイヤモンドもこの種類である。またIa型のように凝集した窒素原子が1つ1つばらばらに分散すれば、ダイヤモンドは濃い黄色や褐色を呈する(Ib型)。Ib型の天然ダイヤモンドは非常に稀で0.1%以下しか存在しないが、窒素を含む合成ダイヤモンドは大抵このタイプである。I型のダイヤモンドは赤外線と紫外線領域両方の電磁スペクトルで波長320nmの吸収が確認され、蛍光や可視光の吸収スペクトルの特徴を有する。 II型 II型のダイヤモンドは窒素の不純物がほとんど存在しない。このタイプの純粋なダイヤモンド(IIa型)は結晶成長過程で生じた塑性変形による構造異常が原因で、ピンクや赤、褐色を示す。IIa型のダイヤモンドは希少で、全ての宝石ダイヤモンドの1.8%しか存在しなく、オーストラリア産のダイヤモンドが大部分を占める。また結晶母岩内に含まれるホウ素原子により鋼鉄のような青や灰色を呈したIIb型ダイヤモンドが確認されている。この種類の宝石ダイヤモンドは全体の0.1%以下しか存在せず、また電気的特性が他のダイヤモンドと異なり半導体としても利用できる。しかしオーストラリアのアーガイル鉱山(英語版)から採れる青灰色のダイヤモンドはIIb型ではなくI型である。IIb型ダイヤモンドは不純物として水素と窒素原子が多く混入しているが、着色原因は未だ解明されていない。II型のダイヤモンドは赤外線領域での吸収が弱く、不純物よりもむしろ結晶格子による原因で吸収が起こる。I型のダイヤモンドとは異なり、波長225nm以下の紫外線では吸収せず、透過してしまう。これらもまた蛍光性を有するが、可視光領域での吸収が認められない。 またダイヤモンドの色を青や黄色などに、人工的に変化させる技術も確立している。サイクロトロンによるプロトン照射、核反応器を用いた中性子衝撃、そしてヴァンデグラフ起電機の電子照射により変色させる。これらの高エネルギー粒子は物理的に結晶格子を変化させ、炭素原子を本来あった場所から弾き飛ばすことで、格子欠陥の色中心を引き起こす。ダイヤモンドに色をより定着させるには、照射技術とその持続時間に関係し、時にはダイヤモンドが放射能を有する可能性がある。 天然ダイヤモンドの中には長年自然に放射線を浴び続け、色を帯びたものもある。ドレスデン・グリーンダイヤモンドはその好例で、これらは数ミクロンの極めて小さなウラン鉱石由来のアルファ粒子から放出する自然放射線により呈色したと考えられる。さらに、構造的に変形しているIIa型のダイヤモンドを高温高圧法で修復させれば、ほとんどまたは全ての色を除去できるかもしれない。
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