各生息地の状況
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/01 06:45 UTC 版)
淀川水系 国交省近畿地方整備局淀川河川事務所が1994年から毎年実施している生息調査では、2005年を最後に4年連続で稚魚が1匹も確認されなくなった。この危機的状況をうけ同事務所は、淀川大堰の操作によって自然に近い水位変動を人為的に発生させてワンドの環境改善を図るとともに、2017年をめどにワンドの倍増をめざす計画案を策定した。また同事務所と大阪府水生生物センターは2009年秋、現状の淀川における生息環境適性の把握をねらいとして、以前に淀川で捕獲して人工繁殖させたイタセンパラ500匹の再放流を実施した。場所などの詳細は非公開とされたが、2010年度の調査では5年ぶりに稚魚133匹を確認したと公表、放流個体が繁殖したものと推定されている。しかし大阪市の経費削減策により2012年に大阪市水道記念館が休館し、ここで飼育しているイタセンパラについても飼育は継続しないこととなり、2015年7月末までに繁殖事業が中止されることになった。2018年5月に最後の一匹が死に、市の飼育が終了したため、市は文化庁に「天然記念物滅失届出書」を提出した。一方、2019年に淀川河川事務所と大阪府立環境農林水産総合研究所が共同で行った調査によると、城北ワンド群で11677匹の稚魚が確認され、放流した500匹は淀川に定着したことが確認された。 富山平野 1998年に仏生寺川で再発見され、生息地は万尾川とあわせて2か所となっており、調査では毎年多数の稚魚が確認されている。ただし仏生寺川では2001年から、万尾川では2004年から本種生息地でオオクチバスが確認されており、捕食による個体数減少が懸念される。2008年12月、オオクチバスに捕食されていることが胃の内容物(捕食された消化前の小魚)のDNA解析で裏づけられたと報道された。なお射水市・高岡市・富山市など旧来の生息地では最後の確認例から50年以上が経過しており、再発見される可能性はほぼなくなった。 濃尾平野 木曽川水系での保護活動は奏効せず、1994年の木曽川を最後に確認例がない状態が長く続いた。2007年に木曽三川のひとつでようやく生息が確認されまだ絶滅していないことは判明したものの、密漁者が警察に逮捕される事件も発生しており、地域住民と連携した保護活動の必要性が指摘されている。一方、日進市では2003年5月に稚魚2匹が確認されたのが最後で、すでに絶滅した可能性が高いとみられる。18匹が碧南海浜水族館で人工繁殖を試みられたが、一時的に約150匹まで増殖するもその後すべて死んでしまった。同市では、絶滅が確定したわけではないので経過観察は当面継続するとしているが、生き残っている可能性は薄いと考えられるため天然記念物の現状変更許可は継続申請がなされず2008年8月までで期限が切れ、2009年2月には市主催の保護会議も解散した。
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