原子と物理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/12 15:51 UTC 版)
フレロビウムは14族で炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛の下にある。これ以前の14族元素は全て4つの価電子を持ち、その配置はns2np22であった。フレロビウムの場合もこの傾向は続いており、価電子の配置は7s27p22と予測されている。そのため、フレロビウムはより軽い同族体と多くの面で似た振舞いをすると考えられる。違いは、スピン軌道相互作用の影響の寄与によるものだと考えられる。これは、重い元素では、光速に匹敵するほど、電子がより速く動くため、超重元素で特に強く表れる。フレロビウムでは、7sと7pの電子エネルギー準位が下がり、該当する電子を安定させるが、7p軌道の電子の2つは、他の4つよりもより安定化される。7s電子の安定化は不活性電子対効果と呼ばれ、7p小軌道(subshell)が安定の高いものと低いものに「裂かれる」効果は、subshell splittingと呼ばれる。コンピュータ化学では、軌道角運動量lが1から安定性が高い1/2と安定性が低い3/2に変化したとみなされる。多くの理論的目的で、価電子配置は7p subshell splitを反映して、7s27p21/2と表される。これらの効果により、フレロビウムの化学は同族体とはいくらか異なったものになる。 フレロビウムの7p小軌道の分裂が非常に大きく、7番目の殻はどちらも満たされて相対論的に安定化しているため、フレロビウムの価電子配置は完全な閉殻と見做せ、フレロビウムは貴金属となる。第一イオン化エネルギーは8.539 eVで、第14族元素で最も高い。6d電子は不安定化しており、初期にはこれらは化学的に活性であると考えられたが、その後これは間違っていると考えられている。 フレロビウムの閉殻電子配置のため、金属結合性は前後の元素よりも弱く、そのためフレロビウムは沸点が低く、同様に閉殻電子配置を持つコペルニシウムとともに気体状金属になりうると言われている。フレロビウムの融点と沸点は、1970年代には約70℃と150℃と予測され、14族の他の元素よりかなり低く(鉛の融点と沸点は327℃と1749℃)、下に下がるに従って沸点が低くなる傾向が継続している。以前の研究では、沸点は1,000℃弱か2,840℃と予測されたが、フレロビウムの金属結合性の弱さと周期表の傾向から、フレロビウムは低い昇華エンタルピーを持つと考えられている。最近の実験では、フレロビウムの擬閉殻配置が弱い金属結合の原因となり、フレロビウムの沸点は約-60℃で室温で気体であると示唆している。水銀、ラドン、コペルニシウムと同様に、また鉛やオガネソンと異なり、フレロビウムは電子親和性を持たないと計算されている。 固体状態では、高い原子量のため、22 g/cm3または14 g/cm3と高い密度の金属になると予測される。結晶構造は、面心立方格子の鉛等とは異なり、スピン軌道カップリング効果のため、六方最密充填構造であると予測される。水素様フレロビウムイオン(Fl113+)の電子は非常に速く動くため、相対論効果のためその質量は電子の静止質量の1.79倍になると予測されている。これに対して、水素様鉛とスズの電子質量は、静止質量のそれぞれ1.25倍と1.073倍である。フレロビウムは鉛よりも金属結合が弱いため、表面に吸着しにくい。
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