即位の礼と憲法
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明治憲法下において、「即位ノ礼」は登極令に基づいて挙行され、神事との区別も厳格に行われていなかったが、日本国憲法下で初となる明仁の即位の礼は皇室典範に基づいて行われ、徳仁の即位の礼もこれに倣った。現在の即位の礼の一連の儀式は全て国事行為である。 国民の一部に、即位の礼への国費支出や即位の礼への都道府県知事や県議会議長の参列が憲法の政教分離原則の観点から違憲であるという意見がある。この観点から即位の礼は違憲であるとして、いくつかの憲法訴訟が起こされているが、訴えは全て斥けられている。これらの原告敗訴は、国費支出が原告に不利益を与えないという判断であったり、知事が参列することが政教分離の目的効果基準に照らして政教分離に反しないという判断によるものである。 1977年(昭和52年)7月に最高裁大法廷で下された判決によると、「憲法の政教分離規定は国家が宗教とのかかわり合いをもつことを全く許さないとするものではなく、相当とされる限度を超えるものと認められる場合にこれを許さないとするものである。」とあり、政府はこれを理由の一つとして即位の礼への国費支出を認めている。 ただし、1995年(平成7年)の大阪高裁判例では「平成の即位の礼が既に終了しており、原告に不利益を与えない」との主旨で原告の訴えを斥けながらも、傍論において「平成の即位礼正殿の儀では、政府は、旙(ばん、装飾用の旗)から日本神話において天皇の権威の象徴とされるヤタガラスを取り除いたり、元来内閣総理大臣が正殿の階段の下の宮殿中庭から正殿・高御座の天皇を見上げて万歳三唱するところを、正殿内で万歳三唱するよう修正したりして政教分離、国民主権にも一定程度配慮した」と、政府の政教分離に対する配慮を認めたうえで「憲法違反の疑いは一概に否定できない」と指摘したこともある。 2018年(平成30年)12月10日、原告241名が天皇の退位等に関する皇室典範特例法の規定による明仁の退位と新天皇・徳仁の即位に伴う「退位の礼」、「即位の礼」、「大嘗祭」などの実施が政教分離を定めた憲法の規定に違反するとして、国を相手取り公金支出の差し止めと損害賠償を求め、東京地裁に提訴した。
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