単純ランキンサイクル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/10 06:27 UTC 版)
「ランキンサイクル」の記事における「単純ランキンサイクル」の解説
図 1. 単純ランキンサイクルの構成 図 2. 単純ランキンサイクルの T-s 線図 ランキンサイクルの構成を図 1 に示す。各装置の動作は下記のとおりである。 給水ポンプ(P) --- 復水器に溜まった低圧の飽和水を取り出し、ボイラ圧力まで加圧して給水する。通常、多段タービンポンプが用いられ、複数のポンプを直列に接続する場合は、最初の(低圧の)ポンプを復水ポンプとよんで区別する。摩擦等を無視すれば、等エントロピー圧縮となる。 ボイラ(B) --- 通常、各種水管ボイラ、貫流ボイラが用いられ、管内を流れる水を周囲(または片側)より加熱し、最終的に過熱蒸気とする。加熱を受け持つ部位により、節炭器、蒸発器、過熱器等と区別してよばれる。実際には少なからぬ圧力降下を伴うが、これを無視すると等圧加熱となる。 タービン(T) --- 過熱蒸気を固定翼列と回転翼列を交互に通過膨張させて、タービン軸から仕事を取り出す。膨張に伴って圧力と温度が降下し、最終的には高かわき度の湿り蒸気となる。復水器につながる出口は、真空に近い低圧となっている。タービン内でかわき度が大きく低下する(90%以下)のは、湿り損失およびタービン翼のエロージョンの点で好ましくない。蒸気と水滴の流体まさつ等の影響を無視すれば、等エントロピー膨張となる。 復水器(C) --- タービンを出た高かわき度湿り蒸気は、復水器内で冷却されて飽和水となる。復水器は一種の管胴形熱交換器であり、管内に冷却水(海水)を通し、管外の蒸気を凝縮する。管外の蒸気側は冷却水温でほぼ決まる低圧に維持され、等圧冷却となる。凝縮水(復水)は復水器内底部に溜まるが、これがさらに冷却されてサブクール水となることは、この後のボイラで必要な加熱量の増加となり、まるまる損失となる。このため、タービン排気が直接復水に接触するように冷却水を通す伝熱管を配置しているので、復水器出口は飽和水となる。 上記の説明は、主に火力発電や大型船舶主機を念頭に置いている。原子力発電の場合は、加圧水型原子炉では蒸気発生器が、沸騰水型原子炉では原子炉そのものがボイラの役目を果たす。いずれの型であっても構造上の制約から、発生蒸気はほぼ飽和蒸気の状態でタービンへ送られる点が異なるだけである。 蒸気機関車で用いられるサイクルでは、タービンの代わりに往復動式の蒸気機関が用いられるのに加えて、復水器が無いことが大きな違いである。この理由は、復水器が大きなスペースを要することの他に、蒸気機関の排気を煙突から勢いよく放出することによりボイラー内の通風を良くして燃焼を助けるとの積極的な目的がある。排気を放出して新たにボイラに給水するので、大気が復水器の代りを果たしており、復水器圧力が大気圧になったサイクルと同等である。 ランキンサイクルの状態変化装置理想化した状態変化1→2 給水ポンプ 等エントロピー圧縮 2→3 ボイラ 等圧加熱 3→4 タービン 等エントロピー膨張 4→1 復水器 等圧冷却 上記のように、等圧変化、等エントロピー変化を仮定したとき、T-s 線図上のランキンサイクルは図 2 のようになる。ただし、T-s 線図のサブクール水領域の等圧線は、実際はほぼ飽和水線に重なるので、ここではその間隔を拡大して表示している。また、-50 ℃ 以下の温度範囲を割愛している。
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