千日デパート火災調査委員会
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「千日デパート火災」の記事における「千日デパート火災調査委員会」の解説
建設省は、千日デパートビル火災について、建築構造的な見地から本件火災事故を調査し、被害が拡大した原因を解明することで今後の防災対策を図るため、臨時に「千日デパート火災調査委員会(委員長・星野昌一)」(以下、調査委員会と記す)を設けた。本件火災事故は、未曾有の被害を出した上に特異な原因や状況が見られたことから徹底した現場検証を行ったうえで調査検討がなされた。調査委員会メンバーは、11人の委員と5人の専門委員で構成され、建築学の権威や関係各省庁などの専門家らが参加した。火災発生の同年8月31日に「中間報告」を発表し、基本的見解をまとめた。火災事故から間もない時期に中間報告を発表した理由は、再発防止策を社会的に実施していくうえで行政の準備と対応が早急に必要であったからである。 調査委員会が中間報告でまとめた見解では、火災被害拡大の根本原因として以下の2点が挙げられた。 大量の可燃物が燃焼したことでエスカレーター開口部などの竪穴を通じて上下階に火災が延焼拡大したこと。 大勢の人々が滞在していた7階プレイタウンに火災の情報伝達が為されず、避難誘導が不適切だったことと相まって避難する機会を失ったこと。 千日デパートビルの建築構造上の欠陥については、空調ダクトやエレベーターシャフトおよび階段区画の防煙措置の不完全、避難階段および避難通路の不備、給排気システムの不備が挙げられた。建築構造上の欠陥には、設計計画上および維持管理上の不備も含まれており、空調リターンダクト内の防火ダンパーが3か所設置されていたにもかかわらず、一つも作動していなかったことはその典型例とされ、ビル設備の常時点検や維持管理の必要性が指摘された。また法令による定期検査の強化も必要とされた。建築構造上の欠陥に対する火災被害防止対策としては、大量の可燃物の取り扱いに対する安全対策、情報伝達の整備、排煙および給気システムの整備、避難路の整備、救助活動と消火活動の検討、上階への煙流入の防止対策などが提言された。また今後の研究対象としては、避難路確保の技術的解明が必要とされた。 調査委員会は、火災発生から1年5か月後の1973年12月、最終報告書をまとめた。
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