十試
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/13 18:59 UTC 版)
呂洞賓が鍾離権から受けた十の試練は以下のようなものである。 第一試 ある日、洞賓が外出し戻ってくると、家族全員が病死していた。彼は嘆くことなく淡々と葬儀の準備をした。しばらくすると、死者はみな生き返ったが、呂洞賓は全く怪しまなかった。 第二試 ある日、洞賓が市へ物を売りに行き、その値段を決めたが、相手が前言撤回し、値段の半分しか払わなかった。しかし、洞賓は何も言わなかった。 第三試 洞賓が元日に門を出ようとしたところ、乞食が施しを求めてきたので、洞賓は物を与えた。しかし、乞食はさらに物を要求し、その上罵りだした。しかし、洞賓はただ笑って謝るのみであった。 第四試 洞賓が山中で羊を放牧していると、一匹の飢えた虎が羊の群れを追いかけてきた。洞賓は羊を下山させ、身をもって虎の前に立ちふさがると、虎は去っていった。 第五試 洞賓が山中の道舎で読書をしていると、突然、17、8歳の絶世の美女がやってきた。母の元から帰るところなのだが、日が暮れてしまったので、休ませて欲しいという。夜になると、女性は何度も誘惑したが、洞賓は最後まで心を動かさなかった。女性は三日経った後、去っていった。 第六試 ある日、洞賓が外出し戻ってくると、家の財産が全て盗まれていた。しかし洞賓は怒りの色も見せず、自ら耕し始めた。すると、鋤に何か当たるものがある。掘り起こしてみると、数十の金錠(貨幣となる金塊)であった。しかし、洞賓はそれを土に埋め、一つも取らなかった。 第七試 ある日、洞賓は街で銅器を買って帰ったが、見るとそれは全て金でできていた。ただちに銅器の売り主を探し、これを返した。 第八試 気の狂った道士があぜ道で薬を売っており、「この薬を飲んだ者はたちどころに死に、再び生き返って得道できる」と言っていたが、10日経っても買う者はいなかった。洞賓がこれを買うと、道士が「速やかに死後に備えるがよい」と言った。洞賓はこの薬を飲んでみたが、何も起らなかった。 第九試 洞賓は大勢の人々と共に河を渡っていた。しかし中流に至ると河が氾濫し、風が激しく吹き荒れ、荒波がどっと押し寄せた。人々はみな恐れおののいたが、洞賓は端坐し動かなかった。 第十試 洞賓がひとり部屋で座っていると、突然奇妙な化け物が無数現れ、洞賓に襲いかかり殺そうとした。しかし洞賓は正座したままで、少しも恐れることがなかった。次に数十もの夜叉が襲いかかってきた。また、血をしたたらせた死刑囚が泣きながら「お前は前世で私を殺した。今、私の命を償ってくれ」と訴える。洞賓は「人を殺したのなら、償うのが理だ」と言い、刀を取り自殺しようとした。 すると突然、空中に大声が響き渡ったかと思うと、鬼神達はみな姿を消した。ただ一人、手を叩いて大笑いする者がいる。見ると、それは鍾離権であった。「あなたを10回試してみたが、心が堅く何事にも動じない。きっと仙人となることができるだろう」と言い、彼は呂洞賓を弟子とした。
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