分析、利点、欠点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/31 04:59 UTC 版)
「スイス式トーナメント」の記事における「分析、利点、欠点」の解説
引き分けがないと想定される、勝者(敗者)が明確に決定できる試合においてはノックアウト方式と同じだけの試合数が必要となる。つまり、プレイヤーの数を2を底とする対数を取った値だけのラウンド数が必要となる。したがって、3ラウンドあれば8人、4ラウンドあれば16人のプレイヤーを扱うことができる。もし、最低限必要な試合数よりも少ない数しか行われなかった場合は2人以上のプレイヤーがお互いに顔を合わせることなく全勝で大会を終えるという事態が起こりうる。 ノックアウト方式と比べてスイス式には途中で敗退する選手が1人もいないという利点がある。つまり、大会に出場したプレイヤーは自分の成績に関わらずすべてのラウンドに参加することが保証される。唯一の例外は、参加人数が奇数で1人残ってしまう場合である。残った選手は不戦勝が与えられる。つまり、そのラウンドで対戦することはできないがそのラウンドで試合に勝ったのと同じだけの得点を得ることができる(例えばチェスの大会なら1勝)。そのプレイヤーは次のラウンドに再編入され、再度不戦勝を得ることはできない。 ノックアウト方式と比べた際の他の利点は、最終結果がトーナメントの勝者だけでなく、それ以外の選手たちの相対的な強さも示してくれることである。例えば、ノックアウト方式の決勝戦の敗者は実際にはその大会で2番目に強い選手ではないかもしれない。なぜなら2番目に強い選手が最終的な優勝者に早いラウンドで負けてしまった可能性があるからである。 スイス式トーナメントにおいては時々最終ラウンドを迎える前に、あるプレイヤーがたとえ最終戦に負けてしまっても優勝できるだけの大きなリードを得ることがある。これはいくつかの欠点を持っている。まず1つは、スイス式トーナメントはノックアウト方式とは異なり、最終戦が常にクライマックスを迎えるわけではないということである。そして2つ目は、優勝が確定していて勝つ必要がなくやる気のない1位の選手が最終戦で負けてしまった場合、他のプレイヤーの順位に影響を及ぼすことになる。この問題に対する1つの解決法は、首位の選手には脱落式のラウンドを設けることである。スクラブルのトーナメントではこのような大きなリードを持ったプレイヤーに対して、入賞することは不可能だが高い順位に位置するプレイヤーを対戦させる。この方法はアメリカで1995年に行われたスクラブルのオールスター大会で優勝したデイビッド・ギブソンに対して初めて適用されたことにちなんで、ギブソナイゼーション(またはギブソンルール)として知られている。彼はスクラブル史上最高の賞金王で、大きな大会でも最終ラウンドに入る前に優勝を確定させてしまうことで特に有名であった。このような背景から、優勝が確定した段階で準優勝者の決定に影響が出ないように順位の低いプレイヤーと対戦させられるプレイヤーは「ギブソン化」されたといわれる。 総当たり方式と比べた際の欠点として、スイス式では大会を上位で終えた選手たちは概して良いパフォーマンスをし、下位で終えた選手たちはよくないパフォーマンスをしたことはわかるが、中位で終えた選手については順位があまり意味を持たないことが多い。例えば最近のヨーロッパ・チェス選手権では、最終得点が5½/11だったプレイヤーたちのレーティング・パフォーマンス(その大会の成績だけで計算したレーティング)は2189~2559と散らばっていた。この数値の差は、このグループのうちパフォーマンスの高いプレイヤーはパフォーマンスの低いプレイヤーに対して90%以上の勝率を上げるだろうということを意味する。またレーティング・パフォーマンスが2441だったあるプレイヤーは、パフォーマンスが2518だった別のプレイヤーよりも2.5ポイントも高い得点を上げていた。 この方式はイングランドにおいてポケットビリヤードの予選などに使われている。全勝のプレイヤーが多数出てきてしまう状況を克服するために、特定の回数試合に負けたプレイヤーは脱落させられる。これによって最終戦ではただ1人のプレイヤーのみが全勝で終え、自動的に勝者を決定することができる。一方で残りの選手たちが最終順位を決めるためにはラウンドロビン(総当たり)方式を行わなければならない。 ラウンドロビン方式と比べて、スイス式は実現不可能な数のラウンド数を要求することなく多くのプレイヤーに参加してもらうことができる。勝ち残り式トーナメントはテニスのように一度に限られた数の試合数しか行えないような場合に適している。スイス式においてはすべてのプレイヤーが同時に対戦することができる。 スイス式の最大の欠点は複雑性である。例えばサッカーの大会などに対しては、前もって会場の準備などが必要でありそれぞれの試合においてたくさんの配慮が必要であるといった実用的な理由から基本的には適していない。
※この「分析、利点、欠点」の解説は、「スイス式トーナメント」の解説の一部です。
「分析、利点、欠点」を含む「スイス式トーナメント」の記事については、「スイス式トーナメント」の概要を参照ください。
- 分析、利点、欠点のページへのリンク