公共図書館の司書
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/08 08:53 UTC 版)
戦前の公立・私立の公共図書館の根拠法令である図書館令に「司書」に関する規定があらわれるのは1906年のことである。図書館令では公共図書館を学校に準じる教育機関ととらえていたため、公立図書館について、その専任職員である館長と司書は、公立学校職員に準じた待遇を受けるとされていた。その後、1933年の改正図書館令は図書館に「相当員数ノ司書」を置くとしたが、その職務内容については明らかではなかった。また、同時に改正された公立図書館職員令では「司書検定試験制度」の導入が定められ、1936年には「公立図書館司書検定試験規定」(昭和11年文部省令第18号)が定められて翌年には第1回試験が行われた。だが、そのいっぽうでこの改正では同時に奏任官・判任官経験者であれば司書に任ずることが可能とされ、戦時体制が強化されると専門知識を持つ検定試験合格者よりも国策に忠実な元官吏が司書に採用される例が多くなった。 戦後の1950年に制定された図書館法では、第4条で司書を図書館に置かれる専門的職員と定義し、またその資格要件(前述)を定めた。図書館法により公立図書館における司書とは、司書となる資格を有する図書館員のことを意味することになった。 公立の公共図書館の場合、図書館の設置主体(自治体)が司書となる資格を有する職員を図書館に勤務させることにより、図書館に司書が設置される。現在、公立図書館の司書の設置のされ方については自治体によってそれぞれ異なるが、正職員であれば、以下のような事例がありうる。 司書となる資格を有する者を公開の競争試験により、図書館専任の職員に採用する。 特に司書となる資格を採用の要件としない一般事務職員として任用した職員のうち、司書となる資格を有する職員を図書館に配属する。 またこのそれぞれに職名・補職名として「司書」を発令する自治体と、肩書きの上では特に一般の事務職員と区別しない自治体がある。例えば東京都の場合、都は図書館専門職員として司書となる資格を有する者を試験によって採用し、事務職員の職務名として「司書」を発令しており、各特別区は現在図書館専門職員の採用を行なっておらず、事務職員の職務名には「司書」は存在しない。近年、行政の合理化の中で地方公務員の職名は整理統合される傾向があり、「司書」の職名を正式に発令する自治体は減少傾向にある。 @media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}公立図書館に司書を置くことは、図書館法が要望し、期待するところではある[要出典]。ただし図書館に必ず司書を置かなければならないとは法解釈されず、また公立図書館の役割や実態、機能、地方公共団体における人事行政の方針その他を総合的に勘案して決定されるべきであるとも法解釈される。 現状、日本では公立図書館にかならずしも司書は置かれていない。また公民館図書室などの設置をもって図書館の機能を代替している自治体も多いが、こうした図書館代替施設は図書館法にいう図書館にはあたらないため、そもそも司書制度の適用外である。 専門職制の未確立に加えて、公立図書館における職員の非正規雇用が司書職制の大きな問題として存在する。もともと公立図書館は開館時間の長さなどを補うために、非常勤職員、嘱託職員が数多く雇用されてきた。さらに近年、これに加えて貸し出しカウンターなどの定型的とみなされる業務の外部委託や、あるいは指定管理者制度、PFIの活用による図書館全体の運営の外部委託が広がっている。 受託者として図書館の業務を行う者の職員のなかには司書となる資格を有し、公共図書館の業務に関して高い意欲を持つ者も少なくないが、多くは非正規雇用者であり、公務員司書のような安定的雇用にない。また図書館職員の外部委託化の進展により、地方公共団体の職員として専任の司書を採用する枠はますます狭まると考えられる。その結果、公共図書館における司書のあり方は近年大きな変動のなかにある。
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