公共事業見直しと平成16年7月福井豪雨
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「九頭竜川」の記事における「公共事業見直しと平成16年7月福井豪雨」の解説
だが、1990年代の公共事業見直しの風潮は九頭竜川水系にも及んだ。その最大の焦点となったのが足羽川ダムである。1983年(昭和58年)より福井県より事業継承した建設省が足羽川本川に計画した高さ80mの重力式コンクリートダムである足羽川ダムは、水没世帯数188戸におよび激しい反対運動が巻き起こった。本体着工が為されぬままに1997年、建設省の諮問機関である「九頭竜川流域委員会」・「足羽川ダム建設事業審査委員会」が現行でのダム建設は認められないという答申を出したため建設は凍結された。 その後建設省は福井市等の流域自治体に代替案を提示し、判断を求めた。その賛否両論が渦巻くさなかの2004年(平成16年)7月、平成16年7月福井豪雨が発生した。この豪雨により足羽川流域に記録的な水害が発生、福井市内で堤防が決壊し福井市街中心部が浸水したのを始め足羽川流域を中心に死者5人、浸水戸数14,172戸と甚大な被害となり、激甚災害に指定された。その一方で、足羽川より総雨量の多かった筈の真名川流域では真名川ダムの洪水調節により下流の大野市では被害がなかった。この事実と水害の被害の惨たる様は福井市など流域自治体の行政のみならず被災住民にも大きな衝撃を与え、ダムによる抜本的治水対策が要望されることとなった。 これを受け国土交通省は足羽川支流の部子川に高さ96.0mの重力式コンクリートダムを建設することで、旧ダム案と同様の洪水調節能力と住民の犠牲があらゆる代替案よりも軽微になることから、2006年(平成18年)より平常時は貯水しない治水専用ダムとして足羽川ダム建設事業は再開された。いったんは計画凍結されたダムが復活することは極めて異例であるが、住民のニーズに応えた形で公共事業が再評価されたモデルケースであり、観念的な反対論を排除した客観的検討によって関係者が議論した方法であるといわれている。その一方で日本共産党や全国の公共事業に対し厳しい監視を行っている「国土問題研究会」は足羽川ダム建設には反対し、従来どおりの堤防などによる治水対策を訴えている。ただし、現在のところ流域市町村や豪雨被災住民、そして当の水没予定地域に住む住民はダム建設に賛成の意思を示しており、ダム反対派は不利な状況下にある。今後は水没地域住民への補償の充実性や地域振興への国土交通省の対応が焦点となっている。
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