健保組合の解散
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/02 07:51 UTC 版)
後期高齢者医療制度への負担金で、保険料率が10%を超えると、保険金負担の重さから解散する組合が出て、多数の加入者が、中小企業の社員らが加入する協会けんぽに移れば、国費負担増加に拍車がかかる。全国健康保険協会理事長の安藤伸樹も2018年に「高齢者医療費の負担が大きく、現役世代の負担が限界であることを改めて示している」と指摘している。 セイノーホールディングス傘下の西濃運輸などで構成される西濃運輸健康保険組合(加入者57,000人)が後期高齢者医療負担金に耐えられず、2008年8月1日付けで解散し、協会けんぽに移行した。この西濃運輸健康保険組合は、各地に保有していた保養施設等を売却することなく解散したため、実質的な不良債権を協会けんぽが引き継ぐ事態となった(第26条により、解散により消滅した健康保険組合の権利義務は、協会けんぽが引き継ぐことになる)。 名古屋市の職員健保は、高齢者医療負担金の増加と職員減少により、2008年12月31日に解散し、地方公務員共済へ移行した。 株式会社京樽の健保組合は、高齢者医療負担金の増加により、保険料率を10%以上引き上げる試算となったため、2008年に解散し、協会けんぽに移行した。 新潟運輸健保組合は、高齢者医療負担金と加入者給付の増加により2009年に解散し、協会けんぽに移行した。 派遣労働者とその家族の約51万人が加入する、日本第2位の規模である健康保険組合「人材派遣健康保険組合」が、2018年(平成30年)9月21日に組合会を開き、高齢者医療負担金の増加と財政悪化を理由に、2019年(平成31年)4月1日付で、健保組合を解散することを決めた。2008年の協会けんぽ発足以来、最多の移行者数となる。 2009年のOECD報告では、小規模の健保組合が多数存在する状況であるため、保険者の効率性を高めるために保険者を統合し総数を減らすよう勧告している。 2015年5月27日の参議院本会議で成立した「医療保険制度改革関連法」による医療保険制度改革等の一環として、被用者保険者の後期高齢者支援金について、より負担能力に応じた負担とする観点から、総報酬割部分を2015年(平成27年)度に1⁄2、2016年(平成28年)度に2⁄3に引き上げ、2017年(平成29年)度から全面総報酬割を実施することとなった。 併せて全面総報酬割の実施時に、前期財政調整における前期高齢者に係る後期高齢者支援金について、前期高齢者加入率を加味した調整方法に見直すこととされ、前期高齢者負担金の負担軽減を図ることとなった。もっともこれは、被保険者の標準報酬平均の低い協会けんぽにとって、保険料を現状維持できる見込みが立つことになるが、大企業中心の健康保険組合にとっては、実質的な負担が増すことになる。
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