体液の性質と治療
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 06:23 UTC 版)
「四大元素」、「ユナニ医学#治療」、および「ユナニ医学#薬剤」も参照 古代ギリシャの壺に描かれた瀉血の様子 治療の方針は、過剰な力を除去し、不足するところに加えて(逆療法)、バランスを安定させることだった。四体液説は、「熱・冷・湿・乾」からなるアリストテレスの四大元素説(四性質説)と関連付けられたため、例えば黒胆汁の過剰による病気の場合、その性質は「冷」なので、過剰な黒胆汁を排出し、熱性の食べ物や薬草を摂取して、体液のバランスを戻すよう試みる。ヒポクラテスは、「反対はその反対で治療される(英語版)」という原則を唱えたといわれており、医者はそれぞれの病気や薬草、風土、人間の性質を理解し、治療に生かそうとした。 ローマのガレノスは、ヒポクラテスの「自然」「体液病理説」「四体液説」「逆療法」などの考え方を受け継いで、古代ギリシャの医学をまとめ上げた。またガレノスは、人間の霊魂はプネウマ(生気、精気、霊気、空気、気息とも)を介して肉体を操っていると考え、四体液とプネウマの適度な混合が大切であるとした。プネウマは中医学における気、アーユルヴェーダのヴァータ(風、体風素)に比されるもので、生命エネルギーのようなものだという。人間が生きるには栄養とプネウマが必要であり、栄養が生きたものとなるにはプネウマが不可欠とされた。後のキリスト教では、プネウマは三位一体の「聖霊」と理解された。 ギリシャ・ローマの医学では自然治癒を重視し、悪い体液を排出し自然治癒を促すために、刃物やヒルを使って悪い体液を排出する瀉血(刺絡とも)や、下剤、浄化剤、緩下剤、誘導剤を用いた。また、体液のバランスのために、食事療法や運動、入浴も重視された。「医術について」では、すべての人に当てはまる最高のバランスがあるわけではなく、人によってその体にふさわしいバランスがあり、また健康にいいものは状況・年齢などによって変わってくると説明される。例えば、体が運動を求めている時の休息、休むべき時の運動は健康的ではなく、同じことが飲食物や薬物に関しても言われた。
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