人質司法が問題となりやすい罪名
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/24 01:33 UTC 版)
「人質司法」の記事における「人質司法が問題となりやすい罪名」の解説
「被告人が前に死刑又は無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁錮にあたる罪」の凶悪犯罪の場合は、自白しても逃亡の恐れがあることが最大の理由に保釈が認められないと見込まれているため、人質司法という批判は避けられる(だが、人質司法以外でも前述のように身柄拘束での取調べにおける日本の司法制度の問題は存在する)。 一般的に人質司法として批判されやすいのは、特に否認せずに自白すれば略式裁判の対象となることが多い、下記のような微罪による身柄拘束である。 傷害罪や暴行罪(ケンカや口論など) 軽犯罪法違反 (スタンガンや催涙スプレーの所持。正当性や行為の有無) 公務執行妨害罪 (警察官の職務質問や所持品検査をお断りした場合など) 迷惑防止条例違反 (痴漢など) 道路交通法違反 (酒気帯び運転など) 銃刀法違反 (カッターナイフやはさみの所持。正当性や故意の有無) 特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律違反 (マイナスドライバーの所持。正当性や故意の有無) 児童買春・児童ポルノ処罰法違反 (児童買春における年齢知情の有無) 上記の罪において、否認していると正式起訴に発展することもあり、起訴後は被害者や目撃者などの証人と口裏合わせをする懸念から「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」又は「被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき」が保釈請求却下の理由になり、被害者らの証人が地方裁判所で法廷証言を終えるまでは、保釈という形で身柄が解放されないことが多い。 また、逃亡の恐れが低いとされやすい社会的地位が高い人間が容疑となり複数犯が絡む知能犯罪や経済犯罪に対する捜査において、罪を認めて自白した者には保釈が認められたり、そもそも逮捕されなかったりするが、罪を認めていない者には逮捕・起訴されて保釈が認められないというように、自白の有無で身柄拘束や保釈の是非が決まると考えられる場合は『人質司法』という批判がされやすい。 その一方で、松本芳希大阪地方裁判所令状部総括判事が、2006年に法律雑誌で「現在の保釈の運用は基準が厳格化しすぎており見直しの必要がある」「証拠隠滅の恐れなどは具体的に判断し、保釈を拡大していくべきだ」と述べ、ライブドア事件や橋梁談合事件では捜査機関から首謀者と目された人物が全面否認しても、早期に保釈されるなど変化がみられている。また、痴漢容疑の逮捕案件では、東京地方裁判所では容疑を否認しても勾留請求を原則認めない運用が定着しつつある。
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