人体への被害
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 04:19 UTC 版)
1965年、九州の志賀島沖にて、大きく損傷を受けた小型木造漁船が漂流しているのが発見され、衝突事故によるものと思われた。しかし、船内に人影はなく、直ちに周辺海域で乗員の捜索が行われた。翌日、近くの水深十数mから1体の遺体が発見されたが、着衣から露出した顔面や頸部を中心に激しく損傷しており、部分的に白骨化がみられるなど、死後かなりの日数が経過している様子であった。剖検を行ったところ、着衣の下には新鮮な組織が残存しており、行方不明となっていた乗員であると確認された。遺体の各所にはナイカイツノフトソコエビOrchomenella littoralis(フトヒゲソコエビ類)やウミホタルなどが付着・侵入していた。肺内部に多種の珪藻が見出されたことから死因は溺死であり、骨折痕がないことからスクリューでの創傷はなく、生物による摂食が行われて遺体が損壊したものと結論付けられた。また、後日加害船の航海日誌などから事故の詳細が調査され、これら小型生物が遺体頭部の白骨化に要した時間は、十数時間と見積もられた(永田, 福元 & 小嶋 1967)。その他、類似した事例として、タダノツノアゲソコエビAnonyx nugax,ヒメアナンデールヨコエビAnisogammarus fluvialis,トンガリキタヨコエビAnisogammarus pugettensisが関与したケースも報告されているが、白骨化には至っていない(小関 & 山内 1964)。ヨコエビやその他小型甲殻類による食害の初期には、粟粒大~小豆大の円形の食痕を生じ、それが進行するとあたかも切り取られたかのように部位の欠損がみられるようになるという。 2017年、オーストラリアの砂浜で冷たい海水に30分浸かっていた少年が、気づかない間に足首に無数の細かな傷を負い出血が止まらなくなるという事態に見舞われた。医療機関では原因を突き止めることができなかったため、後日父親は現場で生肉を使用して容疑者となる生物を捕獲した。捕獲された生物は、専門家がフトヒゲソコエビ類と同定した。このグループは腐肉食性を示すため、集団で餌を食べていた近くに長時間留まっていたことなどが被害の一因とも推測されているが、極めて珍しいケースと考えられている。なお、一部報道にてウミノミという名称が用いられているが、これはヨコエビ類ではなくクラゲノミ亜目を指す語であり、誤用である。
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