事件の結末
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/14 02:06 UTC 版)
高度な知性がぶつかり合う様々な応酬ととし子の勇敢な行動に、100億は「虹の童子」の手に落ち、行方不明となった。その数日後、とし子はいかにも誘拐犯から解放されたかのような形で発見され、事件は収束した…かに見えた。しかし緻密な推理と刑事としての長年の勘から、ただ一人、井狩本部長は限りなく真相に迫っていた。この事件の首魁は並大抵の人間ではない。言うなれば「獅子の風格と、狐の抜け目なさと、そして奇妙なことだがそれにパンダの親しさ」を兼ね備えたもの──すなわちとし子本人である、と。彼は意を決してとし子との最後の「対決」に出向く。名家の主として常に毅然とした態度を要求され続けてきたとし子であったが、井狩の前では本心を素直に吐露し、頭まで下げてみせた。ただし100億の行方と実行犯3名の正体についてはがんとして口を割らなかった。 そしてとし子の行動の動機が、モノローグの形で明かされる。それは戦争に国民を巻き込んだうえ3人の子供の命をも奪い、さらには相続税物納の形で美しい紀州の森林を略奪する政策をとった日本国政府に対する、憤怒と復讐だった。さらに戦後に残った4人の子供らの不甲斐無い有様に加え、体の変調、周囲の人々の微妙な態度とから自らの死期が近いことを悟った名家の盟主が、愛する森と山々を守るために国家権力に挑んだ、これは一世一代の凄絶な戦いなのであった。今回の誘拐事件はとし子にとって自分の死後確実に衰退するであろう柳川家を蘇らせ、そして、子供等に活をいれ、御山を守るチャンスだったのだ。3人との遭遇を天佑としたとし子にとって、この2週間の「事件」は老後の寂しい生活に花咲いたいっときの「メルヘン」のようなひと時だった。 井狩は最後に2点だけ確認した。「百億円が悪用されることはないか」「彼ら3人は悪事を繰り返すことはないか」。とし子は「無い」と答え、井狩はそれを信じた。彼はすべての真実を自分の内心に収め、公式には未解決事件として本件を処理するのだった。
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