丶大
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/30 02:40 UTC 版)
「南総里見八犬伝の登場人物」の記事における「丶大」の解説
丶大法師(ちゅだいほうし) 俗名は金碗大輔孝徳(かなまり だいすけ たかのり) 金碗八郎孝吉の息子。永享9年(1437年)、八郎が神余家から逐電した際に身を寄せていた、上総国天羽郡関村の農民一作(金碗家の元若党)の娘・濃萩(こはぎ)との間に生まれた。濃萩の妊娠に動揺した八郎は去り、濃萩は産後の肥立ちが悪く死去。嘉吉元年(1441年)7月、隣国の動乱と金碗八郎の活躍を伝え聞いた祖父一作に連れられ滝田城を訪れ、物語に登場する。しかし八郎は東条城主となる恩賞を拒んですでに腹を切っており、いまわの際での父子対面となった。里見義実はこの子供に「金碗大輔孝徳」の名を与え、将来東条城主とすることを八郎に約束する。 義実は伏姫を大輔に娶わせようとしていた。里見領が飢饉になった際、金碗大輔は安西家に糧米を請う使者として派遣されるが、安西方の襲撃を受ける。つづく滝田城攻防戦でも帰参の機会を失い、母方の縁を頼って上総に逃れるが、伏姫が八房とともに富山に入ったと聞くと伏姫の奪回を目指して登山。八房を鉄砲で撃つが、伏姫にも致命傷を負わせてしまう。大輔は自害を図るが、同じく富山に入った里見義実に留められる。大輔と義実は、身の潔白を立てるという伏姫の自害に立ち会うことになる。このとき八方に散った数珠の玉の行方を探し出すために大輔は出家し、「犬」の字を分解して法名を「丶大」とした。 犬士列伝への登場は行徳・古那屋の場面で、小文吾・房八・信乃・現八らに珠玉と伏姫の縁を伝える役割を果たし、親兵衛の犬士としての再生に立ち会う。その後も蜑崎照文とともに犬士捜索にあたり、甲斐に捜索の本拠を置いて浜路姫の帰還にも関わった。なお知略を尽くして盗賊を退治する挿話もある。「大団円」では伏姫神の聖域である富山の洞窟に消える。 八犬伝の物語解釈上、丶大の存在は重要な位置を占める。丶大は伏姫の夫となるべき人物であった。また、金碗氏は安房の旧領主である神余氏の一族であり、八犬士は朝廷に奏請して金碗姓に改めている。八犬士の霊的な父とする見方もある。伏姫が山中で会った仙童は伏姫に「子を生むときに父と夫と会う」と告げていた。しかし、伏姫は八房も大輔も「夫」とすることを否定して死んだ。「大団円」の挿絵は、神犬八房を伴わない伏姫神の隣に蝉脱した丶大を描いている。小谷野敦は、八犬伝を丶大が父の座を回復する物語として読み解いている。
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