不安定な就業形態
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/15 14:46 UTC 版)
しかしながら、医療・保健分野の代表的な勤務先である医療機関(総合病院、精神科・心療内科、小児科など)においては、診療報酬が算定できるのは臨床心理士の専門業務の一部のみであるため、経営的観点から採用は非常勤とされることがある。 また、教育分野の代表的職業であるスクールカウンセラーについても、平均時間給だけに限定して着目すれば、全国的に約5,000円前後の水準とされ、一見すると数字上は要求される高度な専門性と比例し高給であるように見えるが、予算の都合上、文部科学省の任用規程には「週8 - 12時間」と勤務の時間制限が設けられているうえ、いまだ活用体制の整備が遅れている自治体があるため、実際の平均的な勤務形態は「週4 - 8時間」に留まっている現状がある。 したがって、平均月給換算すれば「8万円 - 16万円」程度でしかなく、さらに「非常勤任用」のために、保険料・年金などの福利厚生、出張費などの諸経費、病気休暇・傷病手当金などの社会保障も認められないことが多い。そのうえ、春休み、夏休み、冬休みなど、教育機関の長期休暇中は実勤務不可能として報酬が支払われないことが多く、賞与などもないため、通算の実勤務は「年間35週」前後と見積もられている。すなわち、スクールカウンセラーの平均年収は、額面で「140万円(最低70万円 - 最高210万円)」という現状で、収入はいわゆるワーキングプア水準であり、1か所の教育機関に勤務しただけでは安定した生活を送ることが困難である。 このような臨床心理士の就業形態の不安定さから2009年には、東京都の児童養護施設8施設に勤務する臨床心理士により、臨床心理士業界初の労働組合「臨床心理士ユニオン」が結成された。同ユニオンは、メンタルヘルスに対する関心の高まりや児童虐待防止法の改正施行により、心理カウンセリングをはじめとした相談件数は年々増加している社会情勢の一方で、月給の手取りが14万円にも満たない劣悪な雇用環境は、人的資源の流出やサービス水準の低下をもたらすことが懸念され、そのしわ寄せが心のケアを必要とされているクライエントにまで及ぶ恐れがあるとし、処遇改善を訴えている。
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