下流・カスピ海まで
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/13 09:59 UTC 版)
サマーラ屈曲はシズラニで終わり、再びヴォルガ川は南西へと流路を変えるが、西岸がプリヴォルガ高地、東岸が低地となっていることには変わりない。バラコヴォに建設されたダムから広がるサラトフ湖は、シズラニまで広がっている。サラトフ、エンゲリスなどの都市を経由し、カムイシンの遙か上流まで広がり、ヴォルシスキーのダムまで広がるヴォルゴグラード湖を抜ける。ヴォルシスキーではヴォルガ川最大の派川にあたるアフトゥバ川を東に分けたのち、ヴォルゴグラートで南東へと向きを変える。ヴォルゴグラードは帝政時代はツァリーツィン、スターリン時代はスターリングラードと呼ばれた町であるが、同じくこの付近で屈曲し西へと流路を向けるドン川との距離が最も狭まる地点であり、また、プルヴォルガ高地もヴォルゴグラードまでで途切れるため、古くから両河川交通の連結地として交通の要衝となってきた。ソヴィエト連邦時代に入り、ヴォルゴグラードの南からドン川までヴォルガ・ドン運河が建設され、両河川は水運で結ばれた。ここまでの地域は肥沃な黒土の広がる、いわゆる黒土地帯であり、春小麦やヒマワリなどが盛んに栽培される。しかしこの地域はすでに気候的にはかなり乾燥しており、灌漑なしでは穀物栽培が不可能であるため、この地域には大規模な灌漑施設が整えられ、灌漑面積はロシア全体でも大きな割合を占めている。ヴォルゴグラードには2009年に全長7kmに及ぶヴォルゴグラード橋が架けられヴォルガ川の両岸が結ばれたが、橋は強風時に共振を起こし大きく揺れたため翌年には再改修された。 ヴォルゴグラードより南は完全な乾燥地帯となり、ヴォルガ川河岸地域を除いては半砂漠が点在する。また、この区間では本流に合流する支流がなくなる代わりに、多数の派川が本流から分岐する。このうちで最も大きな派川はアフトゥバ川である。これらの多数の派川はほぼヴォルガ本流に並行して流れ、なかでもアフトゥバ川はヴォルガ本流の北を450km並行して流れたのち、最後まで合流しないままカスピ海へと流入する。この両河川の間は幅20kmから30kmほどの氾濫原となっており、乾燥地の中の大オアシスとして、またこれらの河川のもたらす肥沃な土壌を利用した果物や野菜の生産地として知られている。またカスピ沿岸低地に入るため、海面よりも低いところを流れることになり、アストラハンの近くの海抜マイナス28m地点でカスピ海に注ぐ。カスピ海は水深が浅く、ヴォルガ川はここでアストラハンを中心とした広大なデルタを形成する。このデルタの河口、カスピ海に注ぎ込む部分は幅150kmにも及ぶ。このデルタにはヴォルガ川の派川が無数に流れており、低湿地帯であることなどからあまり開発の手がはいっておらず、自然保護区に指定されて野鳥の楽園となっている。行政区分としては、サラトフ付近がサラトフ州として沿ヴォルガ連邦管区に、ヴォルゴグラード州とアストラハン州は南部連邦管区に属する。
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