三岐鉄道へ運営移管
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/03 06:56 UTC 版)
「三岐鉄道北勢線」の記事における「三岐鉄道へ運営移管」の解説
2000年(平成12年)に近鉄が経営改善のため北勢線の廃線を表明した。三重交通によるバスへの転換の予定だったが、地元沿線市町では北勢線が地域の公共交通として重要度が高いことを理由に、鉄道として存続させる方針を確認し第三セクターでの運営等を検討した。その後、2002年(平成14年)に近鉄が国土交通省に対して北勢線の事業廃止届を提出し、北勢線の廃止時期が確定した。地元沿線市町では、第三セクターによる運営では機関の設立が路線廃止までに間に合わないこと、および鉄道運営のノウハウもないことから、近隣の三岐鉄道に対して北勢線の運営を依頼した。 これに対して、三岐鉄道は「北勢線を延命存続するのではなく、リニューアルして運行を引き継ぐ」という方針で北勢線の運行継承を決定した。北勢線の三岐鉄道での運営スキームとして、 沿線市町は、「近鉄からの北勢線鉄道用地取得費の沿線市町負担分」+「10年間の運営資金(リニューアル費用+赤字補填)」として55億円を拠出する 近鉄は鉄道用地を有償で沿線市町に、鉄道施設(軌道・車両など)を無償で三岐鉄道に譲渡する こととした。この結果、北勢線の鉄道用地は沿線市町の所有となり、鉄道の運行・運営および鉄道施設(線路・駅舎設備など)と車両の所有を三岐鉄道が行うこととなった。これは、沿線市町が鉄道設備の所有・維持管理までは行わないことから、一般に言う「上下分離方式」には当たらない。ここで特筆すべきは、リニューアル計画で新駅設置や曲線改良工事等を行う場合、工事費用は三岐鉄道側の負担(沿線市町からの運営資金・補助金・自社資金)となるが、土地取得に要する費用は沿線市町の負担となる点である。 こうして2003年(平成15年)4月1日に近鉄が三岐鉄道に北勢線鉄道事業を譲渡し、三岐鉄道による北勢線の運営が開始された。これは鉄道事業法施行後初の民間事業者間での鉄道事業譲渡・譲受のケースとなった。現在では、現業(駅務や保線などの各部門)を行う職員については、「三岐鉄道による北勢線の運営開始以前からの三岐の社員に交代」「北勢線鉄道事業の譲渡譲受と同時に近鉄の社員が三岐に転籍」「三岐鉄道による北勢線の運営が開始以後に三岐の社員として新規採用」の三方式で賄われているが、近鉄から三岐に転籍した社員は定年退職等で減少しつつある。 沿線市町の支援は暫定的に2013年度から3年、2016年度から3年それぞれ延長されている。 この北勢線の譲渡・譲受の形態および運営スキームは、後の南海貴志川線から和歌山電鐵への鉄道事業譲渡・譲受の場合でも採用された。
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