レシピと権利
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/21 16:56 UTC 版)
レシピには著作権が発生しない。レシピはアイディアであると見なされ、「思想又は感情を創作的に表現したもの」という著作物の要件を満たさないからである。したがって、創作の余地のない材料の列記や調理手順などをレシピの考案者の許諾なく転載することや、他者の考案したレシピにアレンジを加えて公開することは、道義的な問題はともかく、著作権の上では問題ない。ただし、材料の列記順に考案者の創作意図がある場合や、レシピの文章に考案者の創作性が含まれる場合は、著作権が発生する。ゆえに料理本やレシピを紹介するウェブサイトも著作権を有する。飲食店が別の業者にレシピを開発してもらった場合は、契約内容を確認する必要がある。 2011年(平成23年)4月27日に東京地方裁判所でレシピをめぐって著作権侵害が争われた裁判例がある。この裁判で原告は、ごはん・おにぎり・ふりかけなどの素材の選択・配列に創作性があるとして「編集著作物」であること、料理法に新規性があるとして料理法そのものとその文章表現が著作物であると主張した。裁判所はごはんなどが通常の意味・方法で用いられており、編集対象として選択・配列されているとは言えないとして編集著作物ではないと判断し、料理法そのものはアイディアであって表現ではないし、文章表現も一般的にありふれた用語で表現したものとして著作物性を否定した。 レシピの考案者が自身のレシピを守る方法として、特許を取得することが考えられる。しかしながら、個人が家庭で作れるレベルのレシピで特許を取得するのは極めて困難である。例えば料理人が客の面前で調理する「カルボナーラの作り方」で特許を出願したが、周知の態様であるとして拒絶査定を受けている。特許が認められたケースとして、焼き栗の作り方、レストランによる「ソースの作り方」、紀文食品による「半熟卵を内包する玉子豆腐」(失効済み)がある。ただし、特許の効力が及ぶのは事業として行う場合に限られ、個人が家庭で特許に沿ったレシピで調理する分には全く問題はない。さらにレストランを戸別訪問して特許侵害を主張することは現実的でなく、特許を取得することで使用する食材や調理方法が公開されてしまうなど弊害が多い。このためザ コカ・コーラ カンパニーはコカ・コーラの原液のレシピに関して特許を出願していない。 創作料理のメニューを商標登録するという方法もある。しかし店内での提供(イートイン)に限る場合は登録不可とされており、商標法上の「商品」と認められるためにはテイクアウトやインターネット販売を行うことが必要である。レシピを「営業秘密」としておけば、これを不正に入手したり持ち出したりした者が不正競争防止法違反となる可能性がある。営業秘密とした場合、秘密状態が維持されなくなった瞬間に保護されなくなるという欠点がある。
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