リバースエンジニアリングと知的財産権
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/06 04:16 UTC 版)
「リバースエンジニアリング」の記事における「リバースエンジニアリングと知的財産権」の解説
工業製品(自動車、製造機器など)を分解し、その内部構造や動作原理を探るリバースエンジニアリング自体は、原則的には「合法」行為であり、市販品などの秘密保持契約なしで合法的に入手できる製品・文献・情報について、リバースエンジニアリングを行うことに問題はない。ただし、解析行為によって得た中身そのものについての情報にもとづき、実装をそのまま真似したクローンを作って商業製品とすることには問題がある。従って、解析部門と開発部門を分ける「クリーンルーム手法」により、解析結果の「外側からの情報」だけを元に、再実装を行う。 知的財産権の概念が広まるまではリバースエンジニアリングによるコピー品が公然と販売されていたが、次第に訴訟が起こされるようになり一部の設計を変更することで回避する手段が執られるようになった。 電化製品や電子機器に於いては、動作上必要のない電子部品を意図的に取り付けたり、ダミーのパラメーターを設定するなど、設計をまるごとコピーしたものが製品化された際に容易に識別できる設計が意図的に盛り込まれることもある。 ソフトウェア(コンピュータプログラム)は著作権の保護を受けるものとされている(日本の著作権法では第10条1項9号)。そのうえで、米国判例上はリバースエンジニアリングはフェアユースの保護の範囲であるとされているが、たとえば日本などにはフェアユースがない。 日本ではリバースエンジニアリングは「違法」だと主張する向きもあったが、一例としては、中古ソフト撲滅運動など、BSAと並びプロプライエタリソフトウェア業界側の強硬な最右翼の一角であったACCSが、マルウェア被害などに対し(自分達がその攻撃の矢面に立たされ、手酷い被害を受けた結果として)マルウェアの解析が必要という現実を認識した結果、例えばアンチウイルスソフトを開発するためのコンピュータウイルスの解析を目的としたリバースエンジニアリングも違法となってしまう、といった見解を示すようになった。 現在の日本法での扱いは、著作権の権利制限のひとつとしてリバースエンジニアリングの適法化が検討され答申が出ている、という段階である。 特に、プロプライエタリソフトウェアに関しては、法ではなくライセンスあるいは契約の下で、逆アセンブルなどのリバースエンジニアリングでソースコードの抽出などを禁止する旨が書かれていることがほとんどだが、そのような条項は独占禁止法の見地からも問題があるとも言われている。 バージョン管理システムのBitKeeperは当初開発会社の厚意によりオープンソースやフリーソフトウェアのプロジェクトであれば無償利用できたが、機能制約や商用ツールであることに対してコミュニティからは不満の声が上がった。さらにアンドリュー・トリジェルが無償版には提供されていない機能をフリーソフトウェアで開発したことが会社に発覚し、無償版の提供が停止された。移行先としてオープンソースのシステムであるGitが開発され大きなシェアを得ることとなった。
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