マトリックスコンバータ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/13 14:23 UTC 版)
自己消弧能力を持つ高速半導体デバイスを使用し、電源電圧を直接PWM制御して、任意の電圧・周波数を出力する直接変換型電力変換装置である。入力三相電源と出力三相を、直接9個の高速スイッチングが可能な半導体素子を用いた双方向スイッチにより接続し、出力側の電圧制御と同時に電源側の入力電流制御を可能としている。双方向スイッチの構成としてはIGBT・ダイオードを逆並列に接続したものが一般的であるが、その他の構成も報告されている。入力側にはPWMスイッチングのリップル成分除去のため、小型のLCフィルタを用いる構成が一般的である。通常のPMWインバータとは大きく異なる回路構成と独自の制御方法により、主に以下の特徴を有する: 電源回生が可能 - 省エネ・高効率 電源高調波が少ない - 入力電流を正弦波状に制御可能 ゼロ速制御に強い - 入力が交流であり、直流出力時でもパワー素子に電流集中がない 平滑コンデンサが不要 - 電解コンデンサを用いないため、小型化・長寿命化が可能 PWMの変調方法には、以下のものがある: 直接法-三角波キャリア比較方式 演算により入力電流分配率および入力電圧の最低電圧・最高電圧の差と中間電圧の差を求め,これらの結果に基づき三角波キャリアの振幅を変調する。そしてこの三角波と入力電流分配率を考慮した線間電圧指令値とを比較して、スイッチングパターンを生成する。 比較的低いキャリア周波数でも入出力制御が可能となる. 直接法-空間ベクトル変調法 マトリックスコンバータの出力電圧に空間ベクトルを定義した場合(入力が直流電圧源であるインバータとは異なり)出力電圧ベクトルは時間とともに変化する。出力電圧の空間ベクトルは27種類あり、次の3種類に分類できる:ゼロベクトル(3種類)- 出力のすべての相が入力と同じ相に接続 方向が固定で長さが単振動するもの(18種類)- 出力の2相が入力の同じ相に接続 長さが一定で回転するもの(6種類)- 出力の3相がすべて異なる入力相に接続 これらの空間ベクトルを組み合わせ、出力ひずみの小さなマトリックスコンバータのスイッチングパターンを求めることが可能となる。 間接変調法-仮想DCリンク方式 マトリックスコンバータは、実際には電圧形インバータのような直流電圧源は存在しない。しかしDCリンクで接続された電流形PWM整流器と電圧形PWMインバータに仮想的に分離すれば、各々の変換器のゲート信号を論理合成してマトリックスコンバータのゲート信号を生成できる。この方法では、通常のPWM整流器・PWMインバータの制御法で用いられている三角波比較方式やベクトル変調方式を、マトリックスコンバータのゲート信号の作成に使用できる。間接変調法は、直接変調法と結果的に同様なスイッチングパターンを生成できる。
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